【前編】では、過去3年と現在のお話をさせていただきました。【後編】は読んでいてあまり気持ちの良いお話ではないと思いますが、自分の思いを正直に書こうと思います。
目次
【後編】腐ったプライドと本当のプライド
アルバイトをするべきではない「理由」
夫婦会議のとき、夫はいつも冷静で、家族のことを一番に考えた上で、言いたいことをひとつずつ言葉に出すタイプです。
「でもね、お金、正直厳しいよね」という夫の言葉。
アルバイトが必要なことはわかっていました。そのときは「アルバイトする」と言ったものの、3日後に夫に伝えたこと、それは「やっぱり考えたんだけど、今このタイミングでアルバイトをするべきではないと思うんだ」
私は理由としてこう続けました。
「講座を受講してまだ数日だけど、今は目先のお金を稼ぐより、その時間を使ってできるだけ学習を進めて、一日でも早くプロになって稼ぐべきだよ。入ってくるお金も違うし。講座を開始しておいてアルバイトを始めるって、勉強する気あるの?って感じだよね。大事なことは一日でも早くプロになって稼ぐこと。アルバイトしている場合じゃないと思う」
さらには、
「せっかく家計から大金を出してもらったのに、そこに集中投下しないって、逆にダメだと思う」
とも言いました。
正しい理由に聞こえますよね。
「今、アルバイトをするべきではない」果たして本当にそうなのでしょうか。
もちろん、「アルバイトなんてしてる場合ではない」と感じるほどの危機感を抱いているのは事実です。
そのときの夫の返事は、「だめ。そんなんじゃだめだよ」
「アルバイトは必要だって二人で話したでしょ。なんでもかんでも自分の思い通りってのはだめだよ」。たぶん色んな意味で全てを見透かしていたのだと思います。
アルバイトを「するべきではない」本当の理由
ここからは汚いプライドの話が出てきます。気分を害される方もいると思います。
私がアルバイトを拒否した理由、そこにはもうひとつ理由がありました。
もちろん、上記の理由も本音です。講座を始めてみて、自分が越えなければならない壁の高さに大きな危機感と言い表せない焦りを感じました。「アルバイトなんてしている場合じゃないんじゃないか……?」そう感じたのは事実です。
ただ、本当はもうひとつ大きな理由がありました。言葉を選ばずに書きます。
総合職で働いてきた私がアルバイトになるなんて、絶対に許せない
10年以上にわたり総合職で働いて、充実した生活を送ってきました。独身のときに何度か転勤して、得たものも失ったものもある中で、一生懸命ステージを上げてきたつもりです。尊敬できる人に囲まれて、自分なりに成長してきたつもりです。月に何度も新幹線に乗り、出張をこなし、年収も、年齢の割に高かったと思います。
もちろん大変な時期もありましたが、キャリア面でも経済面でもしっかりできていると自信が持てる生活を送ってきました。そんな過去があるがゆえに、「高校生でもできるアルバイト」に格下げするのが許せなかったのです。私の中の履歴書に「アルバイト」という文字が刻まれるのが、嫌で嫌でたまらなかったのです。
さらには、本来であれば翻訳業で綺麗なスタートを切っているはずだったこの時期にアルバイトをするのは、自分の失敗を露呈するかのようで、それを事実にしたくなかったのです。事実なのに……。
そこにあったのは、ただただ大きな『腐ったプライド』と『逃げ』ですね。なんと情けない。
腐ったプライドは腐った行動を生む
それでも私はアルバイトを探し始めました。これ以上家計に甘えてはいられませんし、夫と話して決めたことですから。
しかし、マインドが腐っている私の中で、この『腐ったプライド』がどんどん広がっていきました。昔のことを思い出したり、私は何をしているのだろうと考えたり、誰かのことを思い出して嫉妬したり、アルバイトしか道がないことを不妊治療のせいにしてみたり。
色々な感情が渦巻く中、ネットでバイト検索。アルバイトなんて大学生ぶり、もう15年も前かとため息をつきながら、いくつかピックアップ。同じ沿線の「塾講師」を4~5件選び、エントリー。面接を受けることに。塾講師は時給も高く、自分の勉強にもなりますし、アウトプットの練習にもなります。
数校の採用試験を2日ほどで終わらせ、最後の1校から電車に乗って帰宅しているとき、「なんて馬鹿なことをしているのだろう」と思いました。
塾講師の採用試験には面接の他にテストがあり、1校につき2時間程度の学力テストを受けます。英語・国語・数学・社会等、中高生レベルの内容ですが、忘れている部分も多く、意外と難しいです。それに加えて模擬授業をしたところもありました。2~3校まわるとあっという間に一日が終わります。帰りにはぐったり。電車の中で化学のドレミファを読みながら、「こんなことしている場合じゃない」と思いました。
今回の「こんなこと」とは、アルバイトをすること自体を指しているのではなく、数駅離れた塾をアルバイトの場にしようとしていることです。
塾をアルバイトの場にしようとしている理由も、実は私の『腐ったプライド』から来ているものでした。
塾講師を選ぶ理由。建前としては、「時給が高い」「自分も勉強になる」です。しかし本音は、「せめて大卒しかできないアルバイトしたいな」これでした。スーパーや喫茶店で制服を着て「いらっしゃいませ」とやるのが、どうしても嫌だったのです。
アルバイトをしていることを誰かに言うとき、「スーパーで」なんてかっこ悪くて言えないけど、「塾講師」なら言えるよね。心のどこかでこう思っていたのです。
ただ、蓋を開けてみれば高校受験レベルの学習はけっこう難しく、大したスキームもない私は授業前にかなりの予習が必要ということがわかりました。(塾側もアルバイトにはそれを望んでいます)
しかも往復1時間以上かかる……移動時間も勿体ない。いくら時給が高くて、私が望む「スマートな」バイトでも、前後の部分に余計な時間がかかるようでは全く意味がない。そんなことしている時間があるのなら、1時間でも岡野の化学を進めて自分の血と肉につなげていきたい。そんな思いがふつふつと沸いてきました。
しかし、私の『腐ったプライド』はしぶとく、過去の自分を目の前にちらつかせてきます。そこでとった行動が、ブレインダンプです。
結果はブログに書いている通りです。膿を出し切ることで、今やるべきこと、向かう方向が明確になりました。
そして、何のためのアルバイトなのかも。
翌日、密かにブックマークしていたとあるアルバイト先に電話をしました。採用は即決。翌週からそこでアルバイトをすることになりました。
本当に大切なものから並べる
今、自宅から徒歩5分の飲食店でアルバイトをしています。制服を着て、高校生と一緒に「いらっしゃいませ」と接客をしています。時給は塾講師に比べて7掛け以下。しかし往復の時間は10分、予習も要りません。三角巾をするので、ヘアセットも不要。
「アルバイトをするために使う時間」が限りなくゼロに近いので、実質の時給はこちらの方が高くなりますし、自分に割ける時間も増えます。もちろん時間きっちりに退店し、小走りで帰ってそのまま机に向かいます。
ブレインダンプをして、「いい格好」をするのはもうやめにしようと思いました。家族にとって大切なもの、自分にとって大切なものを明確にして、人のせいにせず一歩ずつ進んでいこう。素直にそう思いました。
今アルバイトをしている飲食店には、不妊治療をしていることを事前に伝えました。病院が入らない時間帯に入れてほしいというお願いを快く承諾してくれて、とてもありがたかったです。
メインの学習時間が確保できるように、アルバイト量も週3回程度(1回半日)で調整しています。不定期で病院が入るとしても、学習時間は週に最低55時間(目標60時間)確保できるはずです。これは、「まずは1年で2500時間やるぞ」という目標にもなんとか届く水準です。この水準を下回らないように、まずは量、そして質のアップを図っていきます。
フルタイムでお仕事をされている方からすると、なんて贅沢な環境で、甘っちょろいレベルの話なんだ……と呆れられるかもしれません。私も働いているときは、毎日目が回るほどに忙しく、一番欲しいのが「自分の時間」でした。今の環境に感謝しつつ、それを作ってくれている夫の重荷を少しでも早く減らせるように、今できることをフルパワーで進めていきます。
週3日程度のアルバイトで稼げる金額なんて本当に大したことないけれど、その数万円でも毎月の我が家にとっては大きいです。アルバイト時間を倍に増やせばさらに数万円入ってきますが、それは今やるべきことではありません。そこは夫婦でしっかり話をして、理解してもらっています。
①不妊治療の通院に支障が出ないこと
②講座の学習時間をしっかり確保できること
これが実現できるバランスで
③家計の不足分をアルバイトで補うこと
今後はこのサイクルで生活をまわすことに定まりました。
もちろん、どのような予定の日でも「無駄な時間ゼロ」を徹底することは言うまでもありません。
2018年は自分のマインドの弱さが原因で遠回りをしてしまい、失敗もしましたが、自分の過去・未来としっかりと向き合った結果、2018年が終わる前に余計なものをそぎ落とすことができました。
これは私にとって、大きな大きな前進です。非常にお恥ずかしい話ですが、講座を始めていなければ、いまだに腐ったプライドを抱えて、出口のない迷路をぐるぐる回っていたと思います。
アルバイトの思わぬ功名
余談ですが、アルバイトを始めて生活にリズムが生まれました。専業主婦の方でもお子さんがいらっしゃればお迎えのときなどは外に出ますし、行事などで人と話すこともあるかと思います。子どもがいない専業主婦の私は、日中はほんっっとうに誰とも会いませんし言葉もかわしません(笑)
中国在住のときも夫婦二人でしたが、毎日大学に通っていたので、たくさんの人と会話をしました。翻訳の仕事を始めるとメールや電話など外と関わることも少しは増えるのだと思います。が、今は勉強中の身とはいえ、これほどまでに外の世界と関わらない生活は初めてです。
その意味で、接客のアルバイトを気分転換の場として活用しています。また、スーパーも同じ方面ですので、買い物の効率もよくなりました。足を動かす接客は、適度な運動にもなります。(自宅ではずっと座りっぱなし……)
贅沢な話ですが、時間の制約がないのもある意味考えものです。「時間の制約が全くない世界」に一度でも足を踏み入れてしまうと、知らぬ間にその沼にはまり、気付かぬうちに慣れてしまっているという恐ろしい事態になります。これまでも一日中家にいて勉強や情報収集をしていましたが、どこかで「時間は無限にある」と勘違いをしていたのでしょう。これは過去のブログにも書きましたね。朝から晩まで時間があったときよりも、アルバイトを始めてからの方が、トータル学習時間が長いのです。そんなもんですよね。
『プライド』は持ってもいいけれど種類を変える
私は総合職だったんだから――この腐ったプライド、それがもたらした愚かな行動。まわりの人や過去と比較することで、誇りはいつしか汚いプライドとなり、自分を苦しめる存在になっていました。自分で勝手に苦しんでいただけですが……。
ちょうどそんなとき、ビデオで管理人さんがおっしゃっていたことをメモしたものが目の前に貼ってあります。(すみません。どのビデオか忘れました)
「今さら何を守るものがあるのか?一旦、『もうできないんだ』と決めて、そこから『ゼロからでもやれるんだ私は!』という思いを持つ。それが本当のプライドだ」
これを聞いた瞬間、心にグサッと刺さるものがありました。思わずビデオを止めて紙に書いたことを今でも憶えています。
帰国してから現在までの間、自分の腐ったプライドで何度も失敗してきました。これからはプライドの種類を変えて、「本当のプライド」を持って前に進んでいきます。
心につかえているものは、もう何もありません。
最初の1カ月は腐った荷物を捨てながらの日々でした。
もうすっかり身軽になったので、2カ月目以降は加速するのみ!量をこなします。
さあ、頑張るぞ!
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今回のお話はここまでです。【前編】【後編】と長くなってしまい、あまり読みやすい文章ではなかったと思います。最後までお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。