みなさん、こんにちは。Kaoです。
今回は、帰国後の道を具体的に決めるための方法をシェアします。「自分がやりたいこと、やるべきこと」を客観的に分析して、スケジュールを立てること――最初の一歩を踏み出す前に必要な大事なステップです。
本帰国が決まった後にすべきこと。結論を先に書くと、
「未来図を描く」
です。
「色々な選択肢があるけれど、どれもメリット・デメリットがあって決めきれない」
「家庭の事情があって日本に戻ってもすぐに就職は難しい」
「やりたいことはっきりしているけれど、できる自信がない」
こんな気持ちを感じる方に読んでいただきたいです。
ここでしっかりと時間をかけて「未来図」を描いておくことで、自分の思考が整理でき、目指すべき方向が明確になります。「これから、自分は何のためにこれをやるべきなのか」がはっきりすると、あとは走るだけなので精神的にかなり楽になります。
事実、私はこれをやっていたおかげで、壁にぶち当たったときも迷走することなく「自分自身で設定した道」の上に戻ることができました。結果、今はフリーランス中国語翻訳者として継続してお仕事をいただけるまでになりました。
目指す道が企業への再就職でも、組み立て方は同じです。
このタイミングで時間を割いてじっくり組み立てておいて大正解だったと今でも思います。
では、具体的に見ていきましょう。
目次
未来図の描き方

帯同の地でさまざまな経験をしてきたあなたは、「帰国後にはこんな仕事がしたいな」という気持ちがぼんやりでもあるのではないでしょうか。「新しい道」をつくっていくには、まずは自分の「思い」が大切です。
一方で、新しい道をつくるには「思い」の部分とは別に「戦略的な思考」も必要です。
複数の要素が絡み合う中で、どうやって取捨選択していくのか。そして、自分の理想の状態に向けてスタートを切るには「いつまでに」「何を」すればよいのか、ここが重要なポイントです。
当時私が実践した内容を公開します。
ぜひ、ノートとペンを準備して同じようにやってみてください。綺麗に書く必要はありません。少しでも頭に思い浮かんだことを素直に書いてみてください。
参考イラストについて:
私はノートにごちゃごちゃ書いたあと、「自分の未来図」としてパワーポイントでまとめました。パワーポイントにまとめたのは、『無駄に使用する(→こちらを参照ください)』という目的からですので、手書きで何の問題もありません。具体的な枠組みがわかると思いますので、思考の整理方法として参考になれば嬉しいです。
◆◆最良の手段を明確にする6ステップ◆◆
結論を言うと、私はこの作業を通して「在宅フリーランス」という働き方で、「中国語翻訳者」という道をつくると決めました。
実はそこには家庭の事情や夫の仕事など、自分意外の要素も複雑に絡み合った状態で存在していました。その中でこの答えにたどり着いた経緯を、実際に描いた「未来図」とともにご紹介していきます。
少しだけ当時の「優先事項」についてお話させてください。
当時の事情として、「不妊治療を本格的に始める」ということを念頭に置いて組み立てる必要がありました。
以前のブログ『世の中の流れる方向と、自分にとってのベストは違う』でも少し触れましたが、子どもができず、日本に帰国したら不妊治療を本格的にステップアップしようと夫婦で決めていました。実は上海にいる間、検査中心ですが少し始めていました。が、日本に帰国すると同時に本腰を入れて専門クリニックに通い治療することにしました。これは、「夫婦の(=家族の)最優先事項」でした。夫と同じくらい、私も子どもを望んでいたので、二人で頑張ろうと決めました。
が、そこでネックになってくるのが、通院との両立です。「転職(一般企業に再就職)は厳しいよね」というのが現実としてありました。
今はフレックスや時間有休など柔軟な企業も増えてきていますが、何とか調整して月に何度も「急な休み」をもらうのは、その企業に長く勤めている、ある種の「既得権」がある女性だけ。中途で入社したばかりの人間が「明後日、急ですが有休欲しいです」というようなことができるはずがありません……。
そうです。不妊治療の難しいところは、「通院日が事前にわからないこと」「急に決まること」「身体のことなので絶対にその日でないといけないこと」なのです。
毎日行く必要はありません。けれども、「この日」と指定されたものに対しては、絶対に合わせる必要があるのです。それが「明日」でも……。
年齢のこともあり不妊治療は最優先。ただ、仕事面においては「だからできない」ではなく「それでもできる」「それでもやりたい」というものを貪欲に追いかけたいと思いました。
また、夫が転勤族なので、どこかに就職するといつかはまた「突然辞めなければならない」ということになってしまいます。それも「考えるべき要素」のひとつでした。
そのような事情があっての組み立てです。色々な葛藤があっても、可視化して優先順位を明確にすることで、自分の思いが少しずつはっきりしてきます。
あなたの「事情」は私とはまた違うと思います。ご自身の要素と置き換えながら、これからご紹介するステップを進めてみてください。
ステップ1:今の気持ちをとにかく書き出す
まずはノートに今の気持ちを書き出してみてください。最低30分はかけることをおすすめします。
やってみたいこと、自分が新たに好きになったこと、これから先に描きたい人生、帰国後の生活に対する不安、お金のこと、趣味のこと、実家のこと……
どれだけ小さいことでも大丈夫です。それぞれの「大きさ」は一旦無視して、気持ちの隅々まで観察し、思いついたことを書いてみてください。
私の場合はこんな感じになりました。

名前や土地名は消していますが、リアルな内容を見ていただきたいので実物をそのまま掲載します。恥ずかしいですが……。本帰国が決まったときにつくったものがこれです。
まずは「子どもが欲しい」です。素直に。あとは「中国語が楽しくて仕方ない!中国語で仕事がしたい」というような内容。
「孫ができたら〇〇にもいっぱい行きたい」とは、子どもができたら自分たちの親が住む場所にもたくさん顔出ししたい、という意味です。
「海に潜りたい」は、上海ではずっとできなかった趣味のダイビングを再開させたいという気持ちです。
ステップ2:最重要要素をピックアップ
たくさん書き出した要素の中から、「一番大事なのはこれ」というものを2つ選んでください。今、これだけは譲れない。これだけは揺るがない。そう感じるものはどれですか?
これがコアとなります。
私の場合は、下記2つでした。スライド内の文字をそのまま転記します。
- 子供がほしい(まずは一人目やけどほんまは二人おったら嬉しい)
- 片手間ではなく、前と同じようにしっかり働き、しっかりお金を稼ぎたい

この2つは譲れませんでしたし、どちらも捨てたくありませんでした。絶対に両立させたかったです。
このコアの部分を実現することを目的として、次に手段を考えていきます。
ここまでは「思い」が大切です。
ここから先は仕事を「戦略として捉える」ことが必要になってきます。
ステップ3:手段を軸に振り分け
ここが今回の肝になります。
一番左が最も優先度が高い「子ども(不妊治療)」のことです。
この「コア」との関係を客観的に見ながら、他の「こころの声」を振り分けていき、相関関係を明確にします。
中央・右側の枠には先ほど書いた私の「こころの中」が振り分けられています。

この図をご覧いただいたらわかるように、中国語を使った仕事、お金を稼ぐということ、これらに関しては「再就職(=企業への転職活動)」でも実現します。この部分だけ見ると企業への就職でも十分に希望は満たされます。
しかし、最も優先順位が高い「不妊治療(流動的な通院日にしっかり対応する)」とどうしてもマッチしないのです。
一方で、「フリーランス」という手段は、企業への再就職で実現できる要素を手放さずに、かつ他の要素もプラスして、不妊治療とも両立できるということが、図を見ると一目瞭然です。
このようにして、最良の手段が確定します。ここは「できそうかな」「やったことある/ない」という主観は別にして、できるだけ客観的に作業されることをおすすめします。
例えるならば、自分とは別の人間にアドバイスするようなイメージです。

私の場合は「フリーランス」という形で「中国語翻訳者」を目指すという結論が導き出されましたが、その答えが「○○の仕事ができる企業に再就職する」かもしれません。今後、転勤(もしくは他の要素)で引っ越す可能性があるかないかによっても変わってくると思いますし、優先事項やその順番、実現できる手段は人によって異なるはずです。
でも、描くためのステップは同じです。
「自分にはハードル高いな」「デメリットもあるな」
そんな感情が作業を止めてしまうこともあると思います。このステップでは、「私にそんな能力があるのか」は一旦棚上げをしましょう。
ステップ4:メリットとデメリットを考える
ここでは、「なんとなく無理そう」と思っている気持ちを分解して整理していきます。
メリット・デメリットを書き出していきます。
まずはメリットを書き出します。私の場合は「フリーランス」で「中国語翻訳者」になることにおけるメリットです。
よいこともちゃんと可視化することが必要ですからね!
最初に書いた「こころの声」がいくつ実現できるかや、自分視点や家族視点のメリットも書いていきましょう。

次に、デメリットを書き出します。
目指すべき道で必要な費用、初期投資もこちらに記載します。一般的な再就職では初期投資なんてかからないので、これはフリーランスという道を選ぶときの「デメリット」であるのは事実です。
メンタル面の懸念もできるだけ書き出しておきましょう。

お金に関すること、メンタルに関すること、生活スタイルに関すること、老後に関すること……。どの道を選ぶにも「デメリットがゼロ」なんてあり得ませんよね。ここは正直に書き出します。
ステップ5:デメリットの解決策を考える
私の場合はデメリットが8個出てきました。
次は、それぞれに対して、思いつく限りの対策を書いてみてください。1つの対策で2つのデメリットをカバーできることもあると思います。
対策がなかなか見つからないものもあるかもしれませんが、自分でできること、家族に協力してもらえそうなこと含め、角度を変えて考えてみてください。
そのために色々なことを調べたり、経験者にヒアリングしたり、少し時間をかけて情報を取りに行ってみてください。
思いつくものはひとつずつ書き足していきます。そして、整理していきます。
デメリットの中には根本的原因が同じものが複数存在するのがわかります。

ステップ6:数値面で可視化
次にやることは、新たな道をつくる上で「足りないもの」を明確にすることです。
ステップ1~3で「自分の理想」と「実現できる手段」が明確になっていますので、今の自分と比較して「足りていないもの」を書いていきます。
私の場合、具体的に言うと……
フリーランスになるっていっても、ザ・会社員しかやったことがなかった私。個人事業主として必要な知識や手順、翻訳者としてのいろは、必要な装備、足りないものがたくさん見えてきました。
ちなみに…… ステップ1の資料の中に「子供が欲しい」と書いていますが、正しい表記は「子ども」。こんなことすらも知らないレベルの人間が翻訳者をよく目指したなと、今になっては苦笑いですが……(トホホ)。なんとかなるものです。行動計画を明確にすれば。
具体的には、まず「必要なこと(足りないこと)」を書いて、次に「それを埋めることができる具体的行動」を横に記載します。
そして、それぞれに「かかる時間」を1カ月単位で書き、最後に時系列に並べます。
いつ、何を、どのぐらいの時間をかけてやるのか。ここを可視化します。
私の場合はこうなりました。
要素は大きく3つあって、不妊治療・フリーランス準備・失業保険になります。

予想していたよりも早く本帰国になったことは正直残念な気持ちでいっぱいでした。中国語学習でもっと幅を広げたチャレンジをしたかったですし、何より中国が大好きでしたから。
本帰国が早かった唯一のメリットは、失業保険の受給延長期間内に帰れたこと。
『【2】退職直後に帯同 失業保険は「捨て」になるの?』 でも触れましたが、再就職するにせよ、資格の学習をするにせよ、「軍資金」があるのは本当にありがたいことです。
お金について少しだけ付け加えます:
失業保険を受給している間は夫の扶養から外れないといけないので、国民年金・国民健康保険の支払いが発生します。こういった部分も含めて、「どのタイミングで、何に、どれだけお金がかかるのか」を予め組み立てておくことをおすすめします。
ここでの組み立てに必要な項目5つを改めて記載します。
- 「必要なこと(足りないこと)」…課題
- 「それを埋めることができる具体的行動」…アクション
- 「かかる時間」…所要時間
- 「いつからいつまでやるのか」…実施時期
- 「かかるお金」…費用
これを表にしたのが上にある「長期スケジュール」です。
これで未来図が完成です。
シートにして8枚。私はこの理由から無駄にパワーポイントを使ってつくりましたが、ノートに手書きで十分です。(自分で印刷して壁に貼っていたのは、ステップ2、3、6の3枚です)
この「未来図」は、下記の3点で揺るぎない指標になってくれます。
◆コアの部分=目指している一番大きなゴールを見失いません
◆手段=なぜこの方法を取ったかを忘れません
◆時系列表=行動(と修正)に明確なベースができます
この未来図は帰国後のあなたの人生の大きな指標になります。事実、私も何度も支えられました。ぜひ時間をつくって描いてみてください。
「未来図」の描き方はここまでです。
あとはこれに沿って行動あるのみです!
ステップおまけ:夫と共有
もうひとつお伝えしたいことがあります。
新しい道をつくる場合、何かの再スタートを切る場合、家族の合意は不可欠です。
そこで、この未来図を見せて話し合う場を設けることをおすすめします。
目的は、「ビジョンの共有」です。
私の場合は、なぜフリーランスという道を選ぶのか、その先には「自分の挑戦してみたいこと」だけでなく「家族の理想形」も重なっていること、お互いにとってメリットがあること(少なくとも私はそう考えていること)、これらを伝え、「私が実現したい状態はどんな状態なのか」をしっかり共有しておくべきだと思いました。
そして、そこにはちゃんと「私たちが実現したい状態」も重なっていること。ここが全くないと、正直、結婚している意味に疑問符がつきますよね。お互いに。
そのためにも、上のステップで「メリット」を書き出しておく必要があります。自分の中でメリットがはっきりしていても、夫は「今まで考えたこともない分野のもの」を見せられたばかりの立場。メリットはおろか、不安要素が頭をよぎるのが普通の人間です。
自分にとってよいことでも、家族にとってはそう「見えない」こともあるかもしれません。きっと応援してくれる――そう思っていても、実際はパートナーが望んでいない姿なのかもしれません。
「自分の理想」を明確にすることは非常に大切ですが、「相手の理想」にも耳を傾けること、忘れないでください。そして、違う意見が出た場合は素直に聞いてみてください。そして、話し合ってみてください。
本帰国後、新しい船出となるのは妻側だけではありません。夫婦として、新たな船出なのです。
未来図を描くメリット

優先順位がつけやすくなる
自分にとって大切なもの、1つとは限りません。家庭、仕事、趣味、人間関係、お金……。多くの要素が入り混じっています。
ですが、優先順位を決めると行動が明確になります。
優先順位を決めるために必要なのは「比べること」。非常にシンプルです。
が、可視化せずに「比べる」って非常に難しいです。なので、ノートに書き出して見えるようにしてあげると、「比べる」ことが容易にできるようになります。
頭の中でぐちゃぐちゃ考えても、明確な答えはみつかりません。大きなダンボールに服が大量に入っていると、どれを着ていこうか、かき回しながら非効率な探し方をしなければなりません。
一旦、床の上に広げてみると、「これとこれが好き」とすぐに手に取ることができます。
そして、「プラスするならこの帽子がいいね」と、メインの服をベースとして小物もスムーズに決まっていきます。
それが可視化する理由です。
何と何がバッティングするのかがわかる
可視化することでわかるもう1つのことが、相関関係です。
床の上に服を並べてみるとわかりやすいですが、「これ」と決めた一番のお気に入りを着るために、捨てなければいけない選択肢が出てきます。
赤色のセーターがどうしても着たい!そうしたら……同じ赤色のスカートを着るとめちゃくちゃ変ですよね。リゾートで履くようなサマーサンダルがお気に入りの場合、上にダウンコートを合わせるのはどうにも無理がある……。
そういった、「組み合わせの可否」が見えてきます。
単品で見ると素敵なのに、うまくマッチングしないものって、人生にもあります。その「相関関係」を見つけると、戦略がうまく立てられます。この部分に時間を割いて全体像を捉えることをせずに前に進む人が意外と多いです。
迷ったときには過去の自分に会いにいく

今回は私の例で「未来図」の描き方をシェアしました。
ステップ1で自分の気持ちを書くところから全てを組み立てますが、「正直うまく出てこない」という方もいらっしゃると思います。
また、専業主婦が長くなり、新しい道をつくるなんて私にはできっこないと自信を失っている方もいると思います。
「なんか、バリバリ働いていた頃の自分がすごく遠くにいってしまったな……」
いざ「仕事」という言葉に直面すると、なんだか不安になったり、自分の中にあるものがつかめなかったり。その気持ち、すごくよくわかります。
そんなときに手に取っていただきたいのが、駐在妻になることが決まったときのノートです。『【1】夫に「海外勤務になる」と言われたらまずやること』でご紹介したものです。
その中でこんなことを書きました。
今回つくったノートはあなたの宝物になります。帯同する場合、一緒に持っていって現地で感じたここと、気持ちの変化などを書いてみてください。向こうにいる間、荷物の奥底で眠っていても問題ありません。でも、捨てずに持っていってください。必ず開くときが来ますから。
『【1】夫に「海外勤務になる」と言われたらまずやること』 より
ここには、駐在妻になることに対する不安、葛藤、自分が大切にしていたもの、抱いていた期待、理想……たくさんのものが書かれていると思います。
そのノートを見て、過去の自分と対話してみてください。
自分は本来どうなりたかったのか。何を目指したかったのか。何に価値を感じていたのか。
そしてもうひとつお伝えしたいこと。
このノートを書いたとき、あなたは不安でいっぱいだったと思います。押しつぶされそうなほど悩み、考え、自分で決断してこの地に来ました。当時の苦しさを思い出してください。
そんな大きな「壁」を乗り越えられたのですから、今回もきっと大丈夫です。
『プロローグ』で私はこう書いています。
駐在妻になると決めたあなたには、「大きな不安の壁」が2回訪れます。それがいつかというと、
『【プロローグ】駐在妻に立ちはだかる2つの大きな壁』より
駐在妻になるとき(=現地に移住するとき)
駐在妻を卒業するとき(=帰国が決まったとき)
です。
この2つの壁をうまく乗り越えることで、8割以上の不安を消し去ることが可能です。
今回のブログでお話しているのが、冒頭に挙げた2つ目の壁です。
環境がガラッと変わるとき、不安や恐怖が襲ってくるのは何もおかしくありません。特に駐在妻が経験する「帰国が決まった後の不安」は何とも言えない重たさがあります。
今回の「未来図」を使って色々な要素が明確になっていけば、あれだけ大きな不安があったにも関わらず、気持ちが徐々に前向きな方向に変わっていきます。
最後の頑張り時です。
私が「未来図」を描いておいてよかったと思った瞬間

上にも書きましたが、この「未来図」、今でも壁に貼っています。帰国後、フリーランス翻訳者として立ち上げる期間は、何度もこの「未来図」を見て気持ちを奮い立たせていました。私の「指針」であり、大きな原動力になってくれました。
まず、行動面に関しては大きなメリットがありました。明確なスケジュールが描かれていると、「次なにしようかな」というような「考えて立ち止まってしまう」ということが起こらなくなります。
もちろん当初立てた予定の通りにはいかないこと、たくさん出てきます。それで「修正」が必要になっても、元々あるベースからの微調整なので、ゼロから「どうしよう」と考えるよりも数倍早いペースで前に進むことができます。
予めベースを描くことで、「どこがどう足りなくて、今こうなっているのか」が見えるようになります。そうなると、違う方法で試す・量を増やすなど、「対策」が打てるようになります。
完璧でなくてもよいので、スケジュールを作成するときは「数値(期限)」をそれぞれに設定してみてください。
また、メンタル面もしっかりと貢献してくれました。私にとってこちらの方が効果が大きかったです。
フリーランス翻訳者として実際にお仕事をいただけるようになるまでに、何度も壁にぶちあたりました。「もう本当に無理だ」と挫折しそうになったこともあります。
お恥ずかしいですが、「昔は総合職で月数十万円を当たり前に稼いでいたのに、何で時給900円のアルバイトをしているの…」と何とも言えないみじめさを感じたこともありました。
総合職からアルバイトに「格下げ」したときの葛藤はこちらに書いています:
【前編】今、私はアルバイトをするべきではない
【後編】今、私はアルバイトをするべきではない
不妊治療の通院を重ねるもなかなかうまくいかず、「私は子どもつくるために外にも働きにいけず、私だけ家に閉じ込められて!」と夫にあたりちらしたこともあります。
でも、違いますよね。
机の左側にある壁に目を向けると、そこにははっきりとこう書いています。
新しい視点を持てたから新しいことに挑戦したい。
これから引越しがあっても一本道で経験を積み重ねながら継続できる仕事がしたい。
上海で学んだことが生かせる。これは本当にうれしい。
……と。
フリーランスの翻訳者になりたかったのは、大好きな中国語、中国と関わり続けられる仕事がしたかったから。引っ越しても、どんな場所にいっても影響を受けない仕組みづくりをしたかったから。
もちろん戦略として、「不妊治療と並行できるから」という理由もあります。けれど、その先にあるもっともっと長いスパンのものを自分で判断して優先した結果、在宅フリーランスという道を選んだのです。
百歩譲って不妊治療のために在宅というスタイルを取らざるを得ないとしましょう。でも、これもはっきり書いています。「子どもが欲しい」と。夫に言われているからではなく、私の素直な望みでもあるのですよね。だからこれも私の選択。
夫にあたりちらした日の夜遅く、壁に貼ってあるこの「未来図」を見たとき、自分で判断して決めた道なのにうまくいかないときは「人のせい」にする情けない自分を鏡越しに見ているようで、涙が出たのを憶えています。
でも、人間って意外と弱くてせこい生き物です。少なくとも私はそうです。
「可視化」していないと、自分の気持ちがどんどん支配されていって「人のせい」にできてしまう理由を探そうとするのです。
そういったとき、「なぜこの道を選んだのか」「その先にある理想は何なのか」「何のために、なぜこの手段をとっているのか」が明確に示されたものがあると、自分を引き戻してくれます。冷静になって、心も落ち着いてきます。
前回のブログでは「不安を分析する」ということを書きましたが、今回の「未来図を描く」までをセットでされることをおすすめします。
この部分、すごく時間がかかると思います。数時間、半日、いや丸一日かかるかもしれません。でも、それでよいのです。自分の未来を決めるための「地図」を描く作業、短時間で終わるはずがありません。
家だと何か余計な作業をしてしまうという方は、気分転換も兼ねて外のカフェでコーヒーでも飲みながら描いてみてくださいね。
まとめ:もつべきマインドととるべき行動
~もつべきマインド~
- 本帰国が決まって不安になるのは自分だけではない
- ここに大きな壁が立っていることを予め知る
- 新しい道をつくるときに短時間で考えがまとまらなくても大丈夫
- 「思い」とともに「戦略的思考」で仕事を捉える
~とるべき行動~
- 自分のやりたいことを書き出す
- 優先順位を決める
- 手段との相関関係を捉える
- 行動スケジュールを組み立てる
- 夫とビジョンを共有する
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回は、帰国後に必要な手続きのひとつ「失業保険の受給延長期間解除」について、駐在妻なら知っておくべき情報をシェアします。新しい道をつくるときに大切な要素は、ズバリ「お金」と「時間」です。
ではまた次回お会いしましょう!
<次回>駐在妻が帰国後の仕事に困らないためにすべき17の行動
【15】知らないと損!失業保険の給付制限は短縮できる
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駐在妻が帰国後の仕事に困らないためにすべき17の行動
【プロローグ】駐在妻に立ちはだかる2つの大きな壁
【筆者について】私が退職を決意した理由
<退職前~出国まで>
【1】夫に「海外勤務になる」と言われたらまずやること
【2】退職直後に帯同 失業保険は「捨て」になるの?
【3】退職後に支払う住民税を計算しておく
<帯同開始~本帰国確定まで>
【4】定期的に行く場所を「ひとつ」つくる
【5】Excel、PowerPointを無駄に使う
【6】ブログを始める
【7】同じ感覚を持つ友達は1人だけで十分
【8】できる駐在妻の賢いお付き合い方法
【9】現地での語学学習を本気でお勧めするこれだけの理由
【10】この国でしか味わえない気分転換スポットを見つける
【11】できるだけ「国内旅行」をする理由
【12】自分が進化していることを実感できるようにする
【13】本帰国が決まったときの不安の構造を理解する
【14】未来図を描く
<本帰国後>
【15】知らないと損!失業保険の給付制限は短縮できる
【16】再会ラッシュに待った!集団ではなく「個」で時間をつくるべき理由
【17】プライドを捨て切る