語学学習 挫折の前に知ってほしいこの言葉

今、中国語を使った「翻訳」という仕事を人生のお供にすべく、日々ステージを上げています。そんな私も、毎日必死に中国語を勉強していた時代がありました。語学学習はとあるタイミングで非常に大きな壁にぶち当たります。そんなときに救われた言葉がありますので、シェアしたいと思います。語学学習を頑張っている方が行き詰まったとき、一歩前に進むお手伝いができたら嬉しいです。(日本語学習を頑張っている中国人にも読んでいただきたいので、中国語版も用意しました)

「語学学習はカクテルグラスに水を注ぐようなもの」

「語学学習はカクテルグラスに水を注ぐようなもの」

これは私が中国で中国語を学習しているときに出会った言葉です。カクテルグラスは三角錐を逆さまにした形をしていますよね。上にいくほど面が広がっていて、下にいくほど狭く、補足なっていきます。

ここに水を注いでみると、水面が上昇する速度が徐々に遅くなることがわかります。毎秒あたり注いでいる量は一定なのに。注いだ量の合計が多くなるほど水面が上昇する速度はゆっくりになります。

これがいわゆる語学学習の壁の仕組みです。もっというと、挫折の一番の原因です。ある程度の時間を語学学習に投入したことがある人は、どういう情況か伝わると思います。

どういうことなのでしょうか?

これ、水面の高さは語学レベルを表し、水の量は学習時間を表しているのです。初級のときは、レベルアップにそれほど多くの時間は必要ありません。初級時と中級時を比較すると、やはり初級のときの方がレベルアップの速度は速いですよね。

初級のときは単語も比較的簡単で、文法の構造もそれほど複雑なものはありません。もちろん「難しい」と感じることも多いですが、「もともとできない」という状態から前に進んでいるので、「できるようになったこと」の方が相対的に多くなり、基本的には進歩しか感じません。

この過程では「語学って面白い!」「勉強楽しい!」と感じることが多く、自分の頑張りがすぐに成果につながります。

しかし、学習を一定時間継続した後、ほとんどの人が大きな壁にぶつかります。「覚えられない」「何でこうなるかわからない」「頭で理解している内容と正解が違う」「またできなかった」「絶対正解だと思ったのに」、こんなことを感じるときが増え、自分にがっかりすることも。

テキストを1冊終わらせるのにつぎ込む時間、労力は増大し、一文を理解するために色々な角度から考えなければいけなくなります。中級以上のレベルになると、坂道が急になったかのように思え、上るのが本当にしんどく感じます。「キツイなぁ」そう思いながら進むスピードも遅くなります。

多くの人が耐えられなくなります。

しかし、「めちゃくちゃしんどい」と感じたとしても、「なぜこう感じるのか」とは考える人は意外と少ないのが事実です。

そんなときに知っていただきたい言葉。

「語学学習はカクテルグラスに水を注ぐようなもの」

私の実体験

ここからは私の実体験です。

当時、私の中国語はすでに上級レベルでした。HSK6級にも合格していました。日本語試験でいう「N1」ですね。HSKの最上級である6級に合格した後も、(自分で言うのも何ですが)かなり真面目に中国語学習に取り組んでいました。

理由は簡単です。中国語学習を始めたとき、最上級の6級に合格すれば、もう「その辺の中国人」と同じレベルになっていると思っていました。

しかし……

HSKの最上級に実際に合格しても「その辺の中国人」には程遠いレベルでした。

確かに語学学習者としてはまずまずのレベルになっていましたが、もっとレベルを上げたい!と毎日かなりの時間を投入して中国語学習に励みました。

半年後、もう一度HSK6級を受験してみました。これだけ濃密に頑張ったのだから、さぞかし点数もアップしているだろう――。

結果発表の日、その期待は見事に打ち砕かれました。

合格はしました。しかし、点数が2点しか上がっていなかったのです。2点なんて正直、誤差ですよ。要は、「レベルは上がってない」ということです。この事実を突き付けられ、心の底からショックを受けましたね。ネットで点数を確認できるのですが、その画面になった瞬間、愕然として震えたのを憶えています……。

そんなときに私を救ってくれたのが、大学の先生がくれたこの言葉でした。

「語学学習はカクテルグラスに水を注ぐようなもの」

先生はこんなことを話してくれました。

語学学習者は皆、レベルにこだわる。このカクテルグラスだと、水面までの高さね。学習者としては当然のことだけどね。

だけど、違った角度で考えてみてほしい。「水面が上昇する速度が遅くなるのはなぜなのか」を。

あなた考えたことある?

理由は簡単。横幅が広がっているから。

つまり、学習者がその言語を使ってできることの範囲が広がっているから。

よく見ると、水面の大きさは広がっているでしょ?これも語学の大事な要素。あなたたちがその言語を使ってできることはどんどん拡大しているの。けど、これに気がつく学習者って少ないよ。気づいても、「できることの範囲」よりも「試験のレベル」が重要だって思っている人もけっこう多いね。

何で試験があると思う?結局は試験って「人」のために存在するもの。人は自分以外の語学レベルを知ることはできないよね、見た目でわからないし。だから客観的な判断基準を設けて、採用のときなんかにスムーズに判断できるようにしているの。つまり、試験は他人に自分のレベルを伝える道具みないなものね。

試験を軽視してもいいっていう意味じゃないよ。誤解しないでね。でも、忘れないでほしいのは試験のレベルや点数だけがあなたの語学能力を表すものじゃないってこと。

あなたは今、カクテルグラスの上の方の広い水面に立っているの。素晴らしいじゃない。上・下だけに視点を合わせるのではなく、横にも行ってみなよ。こんなに広い水面、今までとは違う方向にお散歩してみな。今までとは違う景色が見えるから。

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みなさん、この話を聞いてどう思いますか?

当時、私はこの言葉にとっても救われました。

確かに、試験まで頑張ってきた半年間は、今までとは違う新しいことにたくさんチャレンジした時期でもありました。大勢の人の前で中国語でスピーチしたり、中国語の小説を読んでみたり、何千文字という文章を書いてみたり。

そして、この言葉を聞いてさらに多くのことにチャレンジしようと心が奮い立ったのを憶えています。

もちろん中国語学習者として、自分の語学レベルを上げたいと思うことは当たり前のことです。しかし、語学能力の尺度は「レベル」という縦のラインだけではないということを意識するようになり、結果としてこの考えが私の中国語世界をぐっと広げてくれました。中国語がより楽しいものになり、さらに好きになりました。

もっと言うと、この視点は今、中国語学習以外の場面でも役立っています。

最後に

本日書いた内容は、自分では気がつきにくいことだと思います。この視点はこれからも色々な局面で私を助けてくれるはず、なんて書くと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、きっとそうであると思っています。

カクテルグラスの水面が「横に」広がっていることも、「縦に」伸びるのとは別の大きな意義があるということを、みなさんにお伝えしたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。