これでスッキリ!拡散、分散、撹拌、乳化の違い

対訳学習の明細書(中国語)が「ホモジナイザー」に関するものだということがわかった状態で、実ジョブを想定し背景知識を整理しました。

わかっていそうでわかっていない言葉。理解してそうで、説明しろと言われると出てこない微妙な違い。頭の中に「確かに存在しているけど整理できていない」という状態のものを、ひとつずつ収納ボックスに整理整頓していきました。

地道な作業ですが、ノートに書くと自分の中に定着するのがわかります。そして、「わかったふり」ができないのもよいところ……

ノートに整理した内容を基に、もう一歩定着させる目的でブログにアップします。できる限り「素人が使う言葉」で解説します。

拡散、分散、撹拌、乳化の違いは?

拡散とは?

【拡散】可溶性物質が流体の中で自発的に散らばり広がること
<6歳用解説>
絵の具とか墨汁みたいな「色が着いた水」を、大きなバケツに落とすと、何もしなくても自然にふわ~っと広がっていくこと

留意点:互いに溶け合っている。時間が経っても戻らない。

具体例:お父さんの焼酎にレモンを絞ったら、最初黄色かったのにすぐに広がって境目がわからなくなった

ポイントは、「自然に」というところ。人の手を加えなくても、時間とともに境目がなくなって全体が均一になる。

分散とは?

【分散】不溶性物質を液中でまんべんなく広げること
<6歳用解説>
砂のようなちーちゃな粒を水の中にたくさん入れて一生懸命かき混ぜて、ぱっと見て「溶けたみたい」な状態にすること

留意点:実は溶けていない。時間が立つと戻る(砂と水の層に分かれる)

具体例:お父さんの焼酎に細かく切った梅干しを入れてかき混ぜたら、全体がピンクになった(でも、時間が経つと下に沈んでいた)

ポイントは、粒子レベルの話でなくてもOKという点。例えば、細か~くみじん切りした玉ねぎをスープの中に入れて鍋をかき混ぜると全体に広がる。これも「分散」です。

撹拌とは?

【撹拌】可溶性、不溶性を問わず、系を均一にするために機械や器具を使用してかき混ぜる操作のこと
<6歳用解説>
どこを舐めても同じ味がするように、液体やねばっとしているものを混ぜまくって、全体を同じ味(ついでに同じ温度、同じ硬さ)にすること

留意点:時間が経つと重たい粒子が沈んで層が分かれる

具体例:牛乳の中にココアの粉を入れて一生懸命混ぜた。飲み終わったら底にココアの粉が溜まっていた。

乳化とは?

【乳化】本来なら混じり合わないもの同士を混じり合わせること
<6歳用解説>
水と油みたいに普通は混ざらないもの同士を、瓶に入れて振ったりして「無理に」混ざった状態にすること

留意点:本来は混じり合わないもののため、時間が経つと戻る(乳化剤を使うと戻らない)

具体例:ドレッシングを使う前に瓶を何度か振る

全て似たような言葉ですが、この中でひとつだけ仲間はずれがいます。どれでしょうか?

答えは……

「撹拌」です。

拡散、分散、乳化→程度や経路は違っても、全て「混ざっていく、混ざっている」という物質の状態を指します。つまり、主語はその物質です。

絵の具が水の中で拡散する
粒子が分散する
水と油が乳化する

一方で、

撹拌→程度や使用する機器は違っても、「混ぜる」という行為を指します。つまり、主語は人です。

研究員が試薬を撹拌する

大きな違いは、物質は自ら自然に「撹拌」しないということ。撹拌は人が何かを撹拌したくて行う「操作」なのです。

【拡散、分散、乳化】と【撹拌】の関係はこうなります。

まとめ

撹拌は「混ぜる」という行為のこと。今朝コーヒーにミルクを入れて混ぜたあなた、それも立派な撹拌です。工場にある撹拌機で大量の液体を混ぜる行為、これも撹拌です。

拡散・分散・乳化は、物質の組み合わせや混じり合った状態によって使う言葉が変わってきます。

撹拌機と乳化機の違い

撹拌とは:
機械や器具を使って物理的な力で物質を混ぜ合わせること。
・粒子の大きさはバラバラ
・細かく見ると部分的な濃淡もある

その撹拌によって得られる成果の一部として、「乳化」があります。

乳化とは:
本来は混じり合わない物質同士(液体と液体)が混じり合っている状態のこと。
・粒子の大きさがバラバラ
・粒子の大きさが均一
どちらも「乳化している」に含まれる

ここに、「撹拌機」「乳化機」をそれぞれどんな関係になるか当てはめてみましょう。

実のところ、撹拌機でも「乳化」はできます。乳化は「物質の粒子を細かく砕いて均一に混ぜ合わせること」なので、撹拌機でも実現できます。(家でドレッシングを振るだけでも「乳化」できるぐらいですから)

しかし!!

撹拌機は物理的な力で混ぜることしかできないので、粒子の大きさを揃えたり、そんなに細かいレベルの仕事ができないのです。

そこで乳化機の登場です。

乳化機は「混ぜる」という機能だけでなく、高圧・超音波という裏技を兼ね備えており、粒子を細かく砕いたうえに大きさを均一化することができるのです。ここが撹拌機との違いになります。

高圧や超音波という技術で「粒子の大きさが均一」という状態にダイレクトに持っていくことができる、それが乳化機なのです。

うーん、この違いを身近なものに例えると、

撹拌機=普通の鍋

乳化機=圧力鍋

ですな。普通の鍋でも時間をかけてずーっと煮込めばとろとろカレーはできます。でも、圧力鍋で「高圧」というスペシャル裏技を使うことで、鍋の中のカレーを短時間かなりのとろとろ具合にもっていくことができます。

こりゃ、乳化機の勝ちですな。

まとめ

撹拌機:物理的な力で大量の物質を混ぜることができる(粒子の大きさはバラバラ)

乳化機:物質を混ぜるだけでなく、高圧・超音波という機能で、粒子を細かく砕いたうえに大きさを均一化することができる

機械乳化とメリット

復習:
乳化とは、物質の粒子を細かく砕いて均一に混ぜ合わせること、でしたね。

ホモジナイザーとは

食品分野では広く導入されている技術のひとつです。乳化機を使って物質を乳化させることを「機械乳化」といいます。

よく耳にする「ホモジナイザー」は乳化機の代表選手です。液体を扱う食品メーカーはほとんどといっていいほど導入している装置です。

ホモジナイザーは、高圧で液体を流してバルブにぶつけ、その衝撃で液体の粒子を細かくする装置です。超音波で粒子を砕く方法もあります。

出典:三丸機械工業

マヨネーズ、牛乳、ジュース……。もし「機械乳化」という技術がないと、普段口にしているもののほとんどの味が実現不可能なものとなってしまうでしょう。

乳化で変わること

粒子の大きさを揃えるとどのようなメリットがあるのでしょうか。目には見えないレベルですが、

・舌触りが滑らかになる
・製品が安定化する(輸送中に分離しない)
・粒子の大きさを揃えるだけなので栄養価は変化しない

乳化は家でも簡単にできます。ドレッシングを縦に振るだけでもできる乳化、少量の場合はそれでもよいのですが、工場で大量に乳化を行う場合はホモジナイザーが必要です。高圧や超音波の技術で、レベルの高い乳化を大量に行うことができます。

乳化剤って界面活性剤と違うの?

乳化についてもう1つ。
乳化は、
①乳化させること
②乳化した状態を保つこと

この2つが実現して初めて製品として成り立ちます。

今回は①の段階について掘り下げていますが、本来は②も必要です。

乳化した状態を保つために使用されるのが「乳化剤」です。

代表的なものとして卵やグリセリン脂肪酸エステルがありますが、「界面活性剤」との違いは何なのでしょうか?界面活性剤も同じ役割りって習いましたよね?

答えはこちら。

界面活性剤の中でも「食品に使う安全性の高いもの」を乳化剤といいます。

関係としてはこのようになっています。

ホモジナイザーの種類

ホモジナイザーは「どうやって粒子を砕くか」で分類されています。

◆高圧ホモジナイザー
液体に高い圧力をかけてバルブに流すことによって、粒子がバルブに衝突。その衝撃で粒子が破砕(細かく砕かれる)されます。

◆超音波ホモジナイザー
液体に超音波振動を与える方式。超音波で液体の中に真空泡が生じ、それが液体の中で弾ける衝撃で粒子が破砕されます。

◆超高速ホモジナイザー
特殊な形をしたミキサーのような回転機構があるホモジナイザーです。2つのミキサーを重ね合わせるように設計されており、その狭い隙間に粒子が入ることでより小さく破砕されます。

その他のタイプとして、
内部を無菌に保つことができるアセプティックホモジナイザーや、実験室用コンパクトサイズのラボスケールホモジナイザーもあります。

超音波で大量に乳化するのは難しいため、超音波ホモジナイザーはラボ用のものが多く、工場で使用されるものは高圧ホモジナイザーが中心になります。

最後に

加工食品分野にはかかせないホモジナイザー。「乳化」と聞くと「ああ、あのマヨネーズの状態ね」とわかりますし、「撹拌」と聞くと工場の撹拌機が思い浮かぶのですが…… それぞれの違い、関係性などをきっちり整理すること、今までできていませんでした。

化学分野では基礎の基礎となる内容。今回の対訳学習を機にしっかりまとめることができてよかったです。