このブログには不妊治療のことを書かないようにしています。
理由は、学習とは関係ないから。(そもそもこのブログは翻訳者をゼロから目指すステップを記録するという目的からスタートしました)
そして、このブログを読んでくれているみなさんにとって有益な情報になり得るとは思えないから。
不妊治療における「病院選び」や「ホルモン値のログ付け」に関するブログは多数存在し、一緒に一喜一憂するためのブログであれば他で十分足りているから、というのも理由です。
でも今回だけは、少し違った趣旨で不妊治療に触れたいと思います。
伝えたいことの結論を先に書くと、
- どんなに非情なことでも、学びはある
- 「お金」にしかできないことがある
です。
それが「不妊」という問題でなくても、多くの方が何かしらの「事情」を抱えながら日々のことに奮闘していると思っています。その中で徐々に辛くなってきたときや、先が見えない中で不安になっている方もいると思います。そんな方がこれを読んで「そういう風に考えることもできるな」と少しでも気持ちが楽になることを願って、この記事を書いています。
目次
私の現状~不妊治療真っただ中~

私は今、37歳です。
33歳で結婚して、結婚と同時に中国に移住しました。1歳上の夫に上海転勤の辞令が出て、いわゆる駐在妻を2年半していました。
不妊治療の世界に足を踏み入れたのは上海で。結婚して1年半ほど経った頃に「全然子どもができない。おかしい」という話をするようになってきました。
私のまわりには不妊治療をしている知人が何人かいたので、それほど「壁」はなく、まずは検査を受けようかということになりました。
年齢は35歳になった頃でした。
不妊治療の世界に足を踏み入れる
上海は医療水準が高く、日本人向けの病院も充実しています。不妊治療専門のクリニックもあります。帯同している日本人妻ご用達の不妊治療クリニックもあります。
ホルモン値や卵管がちゃんと通っているかなどの検査をひと通り実施しましたが、異常はなし。夫婦ともに特に問題は見当たらずという状況でした。
最初はいわゆるタイミング法を継続して、エコーしたり薬飲んだり採血したりを何クールも繰り返していました。けど、妊娠することはありませんでした。
タイミング法だとそれほどお金はかかりません(日本だと数千円/1周期)。しかし、上海では健康保険が使えないので、5倍ぐらいの値段を取られます。
日本と比べるとかなり高いですが、金額自体は、まあ許容範囲といったところでした。
「今回、妊娠しなかったら次は人工授精に変えよう」と話していたのが2017年の冬。結果、妊娠しませんでした。
上海の病院で人工授精を受けるとしたら、日本と同じ内容で受けられるので中身は変わらないのですが、価格は日本円で10万円/1回 でした。日本のクリニックでは平均して2~3万円/1回 です。
人工授精からは、LCCで日本帰って処置を受ける方がこみこみでもお釣りがきます。
その方が安いし安心感もあるし、そうしようかー?と話しているときに、夫に「本帰国」の内示が出ました。
中国にはもう少しいたかったけれど、不妊治療のことだけを考えると「タイミングよかったね」ということになりました。
帰国後は不妊治療を本格的にスタートさせることを夫婦で決めていました。(帰国後、在宅フリーランスという道を選んだ理由のひとつでもあります)
本格的な治療へ
本帰国してすぐに始めたのは不妊治療クリニック探し。家からの距離や実績などを考慮し、自宅から30分ほどのクリニックに決めました。
そして、そこから本格的な不妊治療をスタートさせます。具体的に言うと「人工授精」へのステップアップです。
もうひとつ同時にスタートさせたものがありました。
「特許翻訳者」になるための学習です。
(こちらに関しては、このブログにすべて記録してあります)
2018年は第一に不妊治療、それ以外の時間を全て翻訳者になるための学習にあてました。
合わせてアルバイトを始めたのもこの時期です。不妊治療の負担がじわりじわりと重たくなってくる中、自分の「翻訳」のことに関しては家庭に迷惑をかけず自分でやるべきと思ったからです。以来、翻訳業に関することで家のお金で買い物したことはありません。
と、なんだか偉そうに書きましたが、稼げていない自分を「子どもも生まないし、収入も得ない、何の役にも立たないお荷物嫁」と心の中でずっと責めていました。
ここまで長引くとは1ミリも思っていなかった
2018年は春に帰国後、人工授精を5回やりましたが、全く結果が出ず。
合間に複数の検査を受けましたが、すべて正常数値。
不妊のカップルの原因は、色々な検査を通して明確になることがありますが、それでも全体の1~2割の夫婦は「最後まで原因不明」なんだそう。妊娠におけるメカニズムはまだ解明されていない部分が多くあり、今の医学でも「限界」があるというのが現実。
2019年からは最も恐れていた「体外受精に手を出す」ということになりました。二人でしっかり話し合って決めました。
「まさかここまで長引くなんて……」
上海で初めて不妊治療の検査を始めてから、1年半が経っていました。途中で1~2カ月休んだこともありましたが、この期間、常に不妊治療が生活の中心にありました。
「次の人口授精の日はこの週の後半になります」と言われた期間が、せっかく合格した翻訳会社の面談の日と被っていたときは、「バッティングしたらどうしよう」という心配と、自分ではコントロールできないはがゆさと、直前まで決まらない焦りとで精神的におかしくなりそうでした。(結果、一日ズレてバッティングは回避できました)
不妊治療に対して徐々に疲れてきたのもこの時期です。
不妊治療の精神的負担を振り切るかのように、がむしゃらに勉強に打ち込んでいました。
体の負担とお金の負担が精神を蝕む
2019年からは顕微授精の一択に。
結論を先に書くと、今までに採卵3回、移植を6回行いましたが、すべて結果が出ず、妊娠にはいたりませんでした。
採血したホルモン数値などで「どの段階で停止したか」がわかるのですが、顕微鏡の上で授精させた受精卵を戻しても「着床すらしなかった」り、「一旦着床はしたけれども、その後継続しなかった」り。
2020年の現在、染色体検査まで話は進み、恐らく今年いっぱいで何らかの結論を出さないといけないかなと夫婦で話しています。
逆に言うと、今年いっぱいまでは何も考えずにできること(今までにやっていないこと)を淡々と進めようということです。やるだけやって、あとはすっぱり区切りをつける、という方向にいくと思います。私たち夫婦の性格からして。
メンタルの面を心配してくれる友人もいますが、リアルな話をすると、不妊治療の本当の負担は「体」と「お金」。
「体」について先に書きます。
辛い点が2点。
1つは薬です。
採卵の日に合わせて何日も薬を飲むのですが、大体はホルモンに直結する薬。これ、眠たくなるのです。そして体全体も重たい。それが何日も続く。これは正直、辛いです。
鼻炎やアレルギーの薬はけっこうきつくて、頭がぼーっとすると思いますが、どちらかというとそんな感じに近いかもしれません。
熱が出て2日寝込んでパッと治る方がまだましです。月の3分の2がずっと生理期間のような重みがあります。
薬にも合う、合わないがあるので、「少しでもましなもの」に変えてもらうことはできますが、基本的に副作用は同じ。
病気じゃないのに体が本調子でない――この状態が長く続くと少し滅入ってきます。
しかし、これも治療の一環。うまくお付き合いしていかなければいけません。
コツは、「自分を責めない」こと。
「起床時間に一回目が覚めたけど、引っ張られるような眠気で起き上がれなかった」
「早く寝ているし十分な睡眠時間を確保しているのに」
こんな日が続いたときは、寝坊してしまったと自分を責めてしまいます。
しかし、これを何度も繰り返すと、「薬には抵抗できない」と白旗を揚げるようになります。その分、昼間の集中力を上げるなどして自分の中で無理やりに納得させていました。
もう1つは採卵です。
採卵は…… とにかく痛いです。子宮の内側から針をブスブス刺して、卵巣まで通し、卵子を回収するのが「採卵」です。病院によって麻酔をするところとしないところと分かれるのですが(両方経験あります)、どちらも激痛です。麻酔をするところは、麻酔が効いてからは痛みがないですが、麻酔の注射自体がめっちゃくちゃ痛い!
麻酔がない病院は…… ご想像におまかせします(泣)
そして、不妊治療一番の負担、「お金」について。
体外授精・顕微授精の部類はひっくり返るほどのお金がかかります。
「採卵(卵を採る)」→顕微鏡で授精させる→「移植(子宮に戻す)」
この1セットを2カ月かけて実施するのですが、全部で60万円ぐらいします。
安いクリニックでも50万円を下回ることはないのではないでしょうか。
薬をたくさん補給したり、凍結した卵子が多いと70万円以上になったこともあります。
採卵+凍結代で大体40~50万円くらいで、移植が15万円ぐらいです。
1回の採卵で卵がいっぱい採れてくれればよいですが(その場合は「採卵」→「移植」「移植」「移植」という具合になり、お金の負担が少しましになります)、採卵で1個しか採れなかった場合は「採卵」→「移植」、その後また新たに「採卵」→「移植」ということになり、お金の負担が数倍変わってきます。
でも、これは自分では調整できません。
1回の採卵で4つ採れるときもあるし、1個だけしか採ないこともあります。当然、「0」もあります……。
こんな感じで、不妊治療に関してはもう300万円ほど使っています。最終的に400万円は超えてくると思います。
かなり辛い部分ではありますが、現実です。
不妊治療における本当の「非情」とは

ここまで不妊治療の現実を書くと、「辛いのはよく理解できた」という方もいると思います。
しかし、
不妊治療の真の辛さはまだお伝えしていません。
これは、経験者でないと想像すらできないものです。
不妊治療の真の辛さは、「体がつらいこと」でも「費用がかさむこと」でもなく、
「やったことがその都度ゼロになって、すべてが振り出しに戻ること」
にあります。
これこそが不妊治療が「非情」である部分です。
具体的に説明します。
薬の副作用に耐えたって、針を子宮にブスブス刺して痛くて泣いたって、採卵と移植のために予定を急遽ずらして対応したって、2カ月間のひとつひとつの動向に一喜一憂したって、60万かけたって、
妊娠判定の日に「妊娠なし」と判断されれば、すべてがなかったことになります。
そこにどれだけのお金と時間をかけたか、どれだけ一生懸命やっていたかは、残念ながら関係ないのです。結果が×であれば、それがすべて。
またゼロから、「薬を飲んで」「ホルモンを調整して」……と始まります。
「前回はここまでいったから、次は少し進んだところから――」というのは一切ありません。
それが不妊治療なのです。
例えるならば、不妊治療は超高額な「くじ引き」のようなもの。そこに当たりが入っているかもわからない。入っていても限りなく低い割合かもしれない。または「入っていない」のかもしれない。
当たりでなければまた新しいくじを、同じ高額費用を支払って、引く。
今度は当たることを願って。
結果「はずれ」でも誰にも文句は言えない。払い戻しもない。ましてや次回、少し可能性が上がるなんてこともない。
不妊治療を「当たり」「はずれ」に例えるなんて不謹慎な!とお叱りを受けるかもしれませんね。
でも、こう感じているのは事実です。
少し生々しい話ですが、人工授精までは「本人たちの体調管理」も重要になってきます。
その後のステップも、体調を万全にして食事にも気をつけ、ストレスをためないことで「不必要なマイナス」を防ぐことはできます。
しかし、顕微授精など「受精卵レベル」になってくると、医者の指示通りに治療を受ける以外、私たちができることは何もないです。
薬を飲み忘れないこと、指定された時間に必ず自分でお腹に注射を打つこと。
これぐらいです。
これが現実です。
そして、あとは当たりを願うだけ。
「今回は受精しますように」
「今回は着床しますように」
何度願ったことか。
そして妊娠判定日の夜、私たちの会話は、
「今回もだめだったね――」
その瞬間、この2カ月やってきた薬、検査、採卵、凍結、移植、そして60万円の費用が一瞬にして「なかったこと」になるのです。
次は、またゼロから。
「またゼロになっちゃたね」
そう夫に言った日、私はとあることに気が付きました。
積み上がっていくことの尊さ

ちょうどその頃、同じような会話をしたことを思い出しました。
「まただめだったわ――」
不妊治療ではありません。
トライアルの結果でした。
不合格通知を受け取って、かなり落ち込んでいたことを今でも憶えています。
そのときはショックで心が暗闇に包まれていましたが、何日か経ってふと気付いたのです。「この失敗を分析して、次は絶対に合格したい」と自分のトライアルを振り返っている最中でした。
いくつか改善点を見つけて、「よし、次はここでこうしよう」「こういうときは特に注意しよう」「これには引っかからないようにしよう」とノートにまとめているとき、
この「失敗」は、資産になるのだな――不妊治療と真逆だな。
そう感じたのです。
結果が「×」であれば全てがゼロになってしまう不妊治療と、結果が「×」でもそれを資産にできる学習。真逆でした。
思い返して見れば、化学の学習段階から電子殻の概念でつまずき、明細書の分析でつまずき、対訳学習でつまずき、「全然進んでいない」と思っても、実はちゃんと進んでいるということに気がついたのです。
うまくいかずに泣きをみても、ペースが理想とは程遠くても、それでも少しずつ、少しずつ、やったことが積み重なっていく――
それが「学習」なのだと思うと、学習って、何て素晴らしいものなのだ!と叫びたくなりました。
時間をかけて汗をかいたものは、確実に自分の血肉になっていく。
逃げずに向き合ったものは、全然わからない状態を長く味わったとしても、「わかる」という光が刺す瞬間が訪れる。
トライアルに落ちたからといって、今までかけた労力がすべて泡となって消えていくことなんて起こりえない。記憶がサッパリ消えてなくなることもない。
全ては積み上がっている、階段は少しずつ伸びているのです。
これって、奇跡だよな……
そう思うようになりました。
これは、不妊治療というある意味で対極のものと同時並行していたから気付けたことです。
不妊治療という「対比」がなければ、「奇跡」とまでは思わなかったでしょう。それどころか、「思ったよりも進んでいない」「わかるまでに時間がかかりすぎ」「また不合格」と、しんどい気持ちが先に立ち、足らずの部分が大きく見えてしまっていたと思います。
学習って、人によってペースが違うということはあるけれど、やったらやった分だけリターンがある。リターンが少ないのは「やった量」が足りないだけ。努力不足。その上で、やったらやった分だけ素直に自分のものになる。
だったら素直にやるしかないじゃない!という思いが強くなりました。
全ては自分次第。「自分でコントロールできる」という素晴らしさを、腹の底から感じました。
ここから学習が加速したことは間違いありません。失敗を資産にする、つまり失敗を踏み台に、階段の一段にできるということの素晴らしさ。
不妊治療の非情が、私に教えてくれたこと――汗をかいて踏ん張った学習は、裏切らない。
この気づき、というか腹の底からの実感は、人生において大きな収穫でした。
そしてもうひとつ、感じたことがあります。それは「お金」というものについて。
お金がないとできないことがある

私たちが不妊治療に費やした金額を上に書きました。驚かれた方も多いのではないでしょうか。
私が一番驚いています……と言いたいです(泣)
こんな金額を書くと、「お金あるんだね」なんて思われそうですが、それに対する答えは、
「とんでもない」
です。
かなりの痛手です。日常生活はかなり節約しています。服も買っていませんし、旅行なんて行ける余裕ももちろんありません。しばらくの間だけ、娯楽は我慢です。
日常生活もできるだけ節約。精神的に疲弊するレベルまでは踏み込まない程度に、できる範囲で二人が意識して節約しています。(不妊治療をしているとそもそも旅行の予定が立てられないというのもありますが)
余談ですが、元海外駐在員というと、「商社勤務」と勘違いされることが多いのですが、夫は商社ではありません。全く別の業界です。収入も(私は十分だと思っていますが)世間でいう商社年収ではありませんし、「お金に余裕のある家庭」では決してありません。そんな家庭が不妊治療をするとこんな感じになるのか……というのを日々実感しています(泣)
でも、
事実として不妊治療を継続することができています。
不妊治療は、日常生活費とは切り離して、二人の貯金から出しています。
結婚するときに二人の貯金を「がっちゃんこ」して、ひとつの通帳にまとめました。ありがたいことに前職では満足のいくお給料をいただいていただので、結婚時の「財力」は同じ水準で、通帳をひとつにしたときも、確か半々ぐらいの割合でした。
不妊治療に関するお金は、全てそこから出して「別会計」にしています。
貯金は永遠にあるわけではありませんし、「ある分、全て不妊治療に」なんて考えもありません。「ここまでは不妊治療に使おう」とラインを決めているので、逆にいうとそこまでは毎回大金が減ることに必要以上のストレスを感じないようにしようと、夫婦で決めました。
ここで私が伝えたいこと。
「お金」は大事。
「お金」にしかできないことがある。
これです。
夫婦でどれだけ子どもを願っていても、どれだけ思いがあっても、結局「お金がない夫婦は不妊治療を受けることができない」という事実。
「実家の親に事情を話して、援助してもらっている」という話もたまに聞きます。(うちは双方の親には不妊治療していることを言っていません)
不妊治療って、それだけ高額、いや超高額なのです。
一方で冷静な見方をすると、これも「医療サービス」。お金でその「治療技術」を買うのです。
シビアな話、この水準での「お金」を用意できない夫婦は、チャレンジすることすら許されないのです。
これが現実。
残酷ですが、「医療」はお金でそのサービスを買えるか否かが全て。
体外受精にステップアップすることを決めたとき、「あのとき社畜だったけどお金ちゃんと稼いでいてよかった!」と心底思いました。
そのお陰で今、毎回ガツンと引き落とされる額の大きさに嘆きながらも、「チャレンジ」するという選択肢があるのです。
お金を払っても望むものが手に入らないこともある。
けれども、お金で買えるチャンスがあるというのも、まぎれもない事実なのです。
ちなみに、自治体の補助金もありますが、体外受精・顕微授精レベルになると、正直「無いよりはまし」ぐらいのレベルです。
結局は個の財力なのです。
そう考えると、やっぱり稼いでナンボです。
ちゃんとお金を稼ぐことの大切さが身にしみてわかります。
お金は選択肢を増やします。
「夢の実現」「自己肯定」「恩返し」
仕事をするのにさまざまな理由があると思います。もちろん、これらが大きな原動力になるのは間違いありません。
でも、
やっぱり大事なポイントがあります。
「稼ぐこと」。
仕事をするにあたり、「お金を稼ぐ」は大前提にするべきです。
「羨ましさ」はどこからくるのか

ここからは「不妊治療を始めようかな」と迷っている方に向けた小さなアドバイスです。
不妊治療が長くなってきたとき、ふと感じたことがあります。
「小さな子どもを見ると辛くなるというけど、意外とそんなことはないな」
です。
不妊治療はストレスも溜まりますし、何で自分だけ子どもがいない(できない)のだろうと徐々に追い詰められる人が多いです。
そして、「子どもを見るのが辛い」「人が妊娠したと聞くと涙が出る」と、「赤ちゃんとママ」という存在に目を向けられなくなるという声もよく聞きます。
その気持ち、すごくよくわかります。
私もそうなると思っていました。
人のことが羨ましくなって、嫉妬したり、自分が恥ずかしくなったり、虚しくなったり。
でも、不思議なことに今のところはそれがないのです。
何でだろうと考えたことがあります。
思いついた理由は4つ。
- かわいいものはかわいい
- 羨んだからって自分の結果が変わるわけではない
- 自分のコアがある
- 夫の力
『かわいいものはかわいい』
子どもって、見た目も動きも素直にかわいいじゃないですか(笑)それだけです。それが誰の子であろうが、かわいらしいものは誰が見たってやっぱりかわいらしいのです。
不妊治療で「今回は妊娠していません」と言われて落ち込んだ次の日でも、アルバイト先にきた小さな子どもがかわいくて、パフェを持っていくたびに「この子、丸っこくてかわいいな~」と癒やされます。お客さんがいなくて暇なときは一緒に遊んだりもします。もともと子ども好きというのもあるかもしれません。
『羨んだからって自分の結果が変わるわけではない』
一時期、小さな子を連れている親子を見ると、やっぱりちょっと羨ましいなと思うことがありました。年齢が近そうだと特に。でも、「冷静に考えて、人を羨んだからって自分の治療の成功率が上がるわけじゃないよな」と思ったのです。これは性格かもしれません。
人のことを羨ましく思って、小さな子どもを見る度に舌打ちをして、そうすることで妊娠するのであれば、毎回そうします。けど、どんなに羨んだって結果は変わらない。なので、「不妊治療は別のこと」という考えが自然に根付きました。
『自分のコアがある』
不妊治療を始めようと思っている方にお伝えしたいのは、ここからです。
「自分のコア」とは何でしょうか。
私の場合、「一流翻訳者になりたい」という思いと「そのための学習」でした。これが私の頭と心の中の「一番」でした。
もちろん、不妊治療は家庭にとって一番大事なことです。でもそれとは別に「自分の、個としての大事なこと」を持つことをおすすめします。
事実、この「コア」があることでかなり救われました。そこに意識が行きますし、不妊治療で一喜一憂することに「占領」されるスペースが減ります。落ち込んだときに違う柱(目標)があることで、自分を立て直すこともできます。一番危険なのは、不妊治療のために仕事もやめて、治療に全てを注ぎ込む状態。これかなり危険です。
一流翻訳者になるという「目標」に向かって走ることを同時並行していなければ、私は今頃、精神的にボロボロになっていたでしょう。体外受精・顕微授精まで進む方は特に、不妊治療「以外」のコアをつくることをおすすめします。
『夫の力』
不妊治療を始めて長くなりますが、夫の力の大きさを感じています。ただただ感謝しています。
私が人のことを羨んだりしないのはきっと、「今がすでに100点」と思っているからです。
これには2つ見方があって、1つは、「子どもができたことがない」から今の状態が「マイナス」ではないということ。
今、お子さんがいらっしゃる方は「この子がいない生活なんて考えられない」というと思います。そして、何かの原因でその存在がなくなると、とてつもなく大きな喪失感に襲われると思います。「今まであったものがなくなった。つまりマイナス」なので、「喪失」になりますよね。
でも、私の場合、今まで存在していたことがないものを「プラス」で求めようとしているので、わかりやすく言うと100点を120点にしようとしている状態なのです。
もし、何カ月か妊娠が継続していて、胎動も感じて、その「存在」を感じたあとに、不幸にも流産してしまった場合。この場合は大きな喪失感に襲われて、立ち直れなくなるかもしれません。
しかし、幸か不幸かそこまでいったことがなく、良くも悪くも「今が普通」なのです。「プラスマイナスゼロ」の状態ということです。
もう1つの見方は、その「プラスマイナスゼロ」の日常の水準が、十分に幸せであること。
不妊治療で辛いことは続いているけど、それは「不妊治療でここまでやったにも関わらず、今回むりだった」ということに対して辛いだけで、日常生活は幸せなのです。
普通にご飯を作って、おかずが美味しいだのイマイチだの二人で会話して、どうでもよいことを話して、たくさん笑って、次の日は朝起きてコーヒーを飲んで。
いつもの日常ですね。それがやっぱり幸せなのです。中国から帰国したと同時に不妊治療を本格的に始めてからは旅行も行っていないし、買い物らしい買い物もしていない。「贅沢なこと一切禁止期間」である私たちですが、贅沢なことをしていた頃と同じぐらい心が満たされています。
そんな空間を作り出してくれている夫の力の大きさに驚くとともに、感謝しています。
そして、私も「夫が日常を心豊かに過ごせるように」と願って家のことをしています。そう思うことで、自分の心も豊かになっていくのがわかります。結果、人のことが羨ましくなったりせず、嫉妬や比較で苦しまずに済んでいるのです。
何が言いたいのかというと、
『これから不妊治療を始める方は、自分のコアを持ちましょう』
そして、
『目の前の存在(人・生活)に感謝しましょう』
ということです。
実際に経験してみて、この2つは本当に大事です。
おまけ:それでもまわりは皆、気を遣う……

私が不妊治療をしていると知っている人はみなさん気を遣ってくださるのですよね(汗)特に妊娠の報告や子どもの話題は。そんなもんですよね。私が逆でもそうだと思うので。。。
上にも書いたように、当人になってみると、実は意外と気にならなかったりするのですが。(あくまで私の場合ですが)
いつも変に気を遣わせてしまってすみません……と心の中でつぶやいています!
そこだけは、不妊治療していてちょっと残念なところだなーと思います。なんか壁をつくられてしまっているようで(いや、でもそりゃ気を遣いますよね)ちょっとだけ悲しいし、少し申し訳ない思いがあります。
終わりに

以上、長々と書きましたが、不妊治療についてはなかなか触れないこのブログ、今回は角度を変えて真正面から書いてみました。
記事内にもあるように、不妊治療はまだ継続中で、恐らく今年いっぱいは頑張ると思います。
もちろん、お金とも相談しながら。
ウン十万の引き落としを見るたびに、「くそっ!成功報酬にしろや!むかつく!絶対に稼いで取り返してやる!」と激しく逆切れし、異常なモチベーションにつながっています(笑)
金額や結果に落胆するぐらいなら、その誰のせいにもできない怒りをガソリンに変えて、前に突き進むのみですわ!
と、最後は逆切れ気味に終わりますが……
長々とした内容に根気よくお付き合いいただき、ありがとうございました。