JASIS2019に行ってきました!

行ってきました!JASIS2019。 アジア最大規模の分析機器展示会です。

現在の私たちの暮らしは、様々な科学の進歩の上に成り立っているといっても過言ではありません。 その科学の進歩を支える、分析機器、科学機器メーカーが一堂に会する最先端科学・分析システム&ソリューション展がJASISです。この分野でのアジア最大級の展示会として、世界をリードする各種業界、関連機関と更なる連携強化をはかり、将来の科学の進歩への貢献、ビジネス発展への発見がある場であることを目指しています。

JASIS公式ウェブサイトより

開催期間は9/4~9/6(3日間)ですが、私は2日目(9/5)、3日目(9/6)に参加してきました。

2日間のレポートです。

JASIS2019:1日目

9:20 海浜幕張駅に到着

幕張メッセはここから歩いて10分程度。シャトルバスも出ています。

JASIS会場に到着

会場入口

ここからは撮影禁止なので会場内の写真は残念ながらお見せできないのですが、私が見たもの聞いたものをできるだけ他の画像を用いてお伝えしたいと思います!

10:00~11:00 分析機器のセミナーに参加

JASISでは分析機器に関するセミナーが数多く開かれいます。

公式HPより9/5に開催セミナー(ほんの一部)

そのうちのひとつ「初めての機器分析」に参加してきました。

理由は最も初心者向け(のような気がした)、機器ごとの専門的なセミナーよりも全体像をつかめる内容と思った、です。

一連のセミナー資料が一冊になった冊子が配られます(ずっしり重い)。これをしっかり読み込むだけでも勉強になりそうです。

こちらのセミナー、大変興味深い内容ではあったのですが、イメージしていたものとは少し違ったものでした。

数値がいかに大切か、実験データにおける数字の概念、測定数値の扱い方など「数値」に着目した内容で、私がイメージした「分析機器の全体像を学ぶ」というものではありませんでした。(もっと写真や動画がたくさん出てくると思ったのですが、そういうスライドはありませんでした)

普段考えない視点で「数値」というものに触れて、考え方としては非常に参考になりました。

11:00〜13:00 ブース訪問 第1弾

一番の目的である「分析機器を自分の目で見る、触れる」を達成するために、ブースを回りました。食品業界以外の展示会は初めてだったので、ワクワク。全く雰囲気が違います。

今回のブース巡回では基本的な分析機器を中心に見学しました。必ず確認したかったのがクロマトグラフ、NMR、ホモジナイザー、撹拌機です。

理由は、食品の特許明細書に本当によく出てくるから。

㈱日立ハイテクサイエンス:高速液体クロマトグラフ
アジレント・テクノロジー㈱:ガスクロマトグラフ
メイワフォーシス㈱:ダイヤモンドワイヤーソー

確認したい機器リストには入っていなかったのですが、このカッターは非常に面白いと思いました。わかりやすくいうと、いかに断面に負荷をかけずに物を切るか、という観点で設計されているもの。手前と奥に小さな車輪があり、それを回転させることでワイヤーを動かして調べたい物体を切断します。

金属などの硬いものから食品などの軟らかいものまで。ノコギリのように短い刃物を前後に動かすような方法だと、刃の同じ場所を何度も往復するので摩擦熱が蓄積し、物性に影響するそう。ワイヤーだと切断部分に「長さ」が担保できるので、熱も蓄積せず、断面も綺麗に切れる。動かしてもらうと意外なことにワイヤーの移動はそれほど速くないスピードでした。

NMRって筒型のどでかいイメージがあったので、卓上があることにびっくり!王道の?大型タイプのものはさすがに展示していませんでした。

よく考えるとこのような展示会は「最新の技術」をお披露目、アピールする場。今は当たり前になっているレベルの機器は(メーカーでは取り扱っていても)展示はしないですよね。ちょっと残念。

食品の明細書にNMRの分析値が出てくること、実は少なくありません。最初の方、何も考えず明細書を読んでるときは「1H」を「1時間」と思ってました……(本当は水素核のこと)

さすがに実物は展示していなかったのですが、理化学研究所のブースに行くと担当の方がNMRについて色々と教えてくださいました。(原理や役割りなど、初心者相手に丁寧に解説して下さいました)

わかったようでわからない、見たこともなくイメージがわかない。うーん、明細書には今後も出てくるだろうから、人に説明できる程度に理解度は上げておきたい……

私の渋い顔を見て担当の方が「あ、そうだ。NMR、実際に見ることできますよ」と教えてくれたのがこちらのイベント。

理化学研究所・横浜市立大学 一般公開:2019年9月21日(土)

公式WEBページはこちら

年に一度だけということで、このタイミングで知ることができたのは非常にラッキー!

当日はNMR以外にも色々な知識をつけることができそう。子ども向けのプログラムも多数準備されているようです。ご興味がある方は公式WEBページにてご確認ください。(事前予約のプログラムは明日9/8締め切りです!)

13:00~13:30 昼食・午前中の整理

幕の内弁当が売っていたので購入。キッチンカーでおいしそうなカレーが販売されていましたが、我が家は今週ずっとカレーだったからなあ……。ああ、普通のお弁当でも自分で作らないご飯はこんなにもおいしい♪

14:00~17:00 中国フォーラム2019に参加

中国関連のセミナーが1日だけ開催されるので、それを狙っていきました。

JASIS公式ページより中国フォーラム概要

ポイントをまとめると、

・中国の食品安全を実現するための法律はここ10年でかなり整備された
・分析を行うプラットフォームもかなりの高水準で運営している
・安全検査機関が増加中、分析機器需要も拡大
・高齢化社会に対応する栄養素の研究が進行中(中国も高齢化は深刻)
・漢方の世界的ニーズが拡大見込み、残留農薬を軽減する取組みが進行中
・水質改善は都市部から農村へ(農村はまだまだ改善が追いついていない)

その他:需要が高い分析機器
    小麦や大豆、米の品質区分について情報共有

中国の食に関して人々の目的は、十数年前の「お腹いっぱいに食べる」から「栄養面の充実」「心理的な満足感」が主軸になっており、上海の大学で学んでいるときもその傾向は顕著だと感じました。

個人的には、漢方はこれから世界にもっと広がると予測しています。あとは虫。ゴキブリを漢方の原料にすることもありますし、数々の虫が貴重な栄養源として中国では認知されています。タンパク源の現象という背景もあり、昆虫食は非常に大きな可能性を秘めていると思います。

17:00 セミナー終了

展示会自体も17:00で終了です。本日の内容を整理しながら、帰路につきました。

【1日目】収穫と反省

~収穫~
・LC(液体クロマトグラフィー)、GC(ガスクロマトグラフィー)に初めて触れることができた
・NMRが根本的に理解できていないことがわかった
・理化学研究所のイベント情報を得た
・翻訳市場で考えると、分析機器の市場は日中翻訳の需要が多い?と感じた

~反省~
・機器の「数」は見たが、見ただけで終わって結局何も自分のものになっていない
 
各ブースに展示されている機器をさーっと見て「何かすごーい」で終わっている自分がいました。それではただ無機質の物体を視界に入れているだけということに気が付きました……。明日は(見た数は少なくなっていもよいので)気になる機器ひとつに時間を割き、疑問点を潰していくやり方に変更。

JASIS2019【2日目】

本日は午後に用事があるため、午前のみの参加です。時間がないので無駄な行動をしないよう、行動計画を印刷した紙を手に幕張メッセへ向かいます。

10:00 開場

『科学・分析機器総覧』をいただきにいきます。数々の分析機器とその特徴が写真付きで掲載されています。

総覧はかなり分厚く、重い!DVD版もあります


撹拌機のページ

かなりの数が網羅された内容(カテゴリごとに分けて掲載されています)ですし、イラストでなく写真というところが嬉しいですね。なんとこれ、無料!

毎日限定数を設定して配布(というか各コーナーに放置)されています。すぐなくなりそうで朝一番に取りに行ったのですが、午後もまだ少しありました。

イメージがわかないときに写真でひと目確認できるものが手元にある。これ、とてもありがたいことです。

10:20~11:00 基調講演を聴講

本日参加予定の基調講演は展示会の入場登録をしたときから楽しみにしていたプログラムです。

「美味しさを可視化する分析技術」

「美味しい」って何なのか?それを裏付けるために何を「測る」のか?

非常に興味深い内容で、聞いていて引き込まれました。食品メーカー技術職の方が、美味しさの印象づけに大きく影響する香りについて、分析機器を活用してどのような仮設を立てるのか、風味の設計にどう生かすのかという話をされていました。(キリンHG、サッポロビール社のパートまで参加)

11:00~12:00 ブース訪問 第2弾

帰る前に最後のブース巡回。展示スペースは非常に広いため、昨日は駆け足で回っても足を踏み入れたのは全体の半分以下。残り1時間、昨日とは逆側のスペースを回りました。

㈱島津製作所:超高速トリプル四重極型LC/MS/MSシステム

クロマトグラフについて色々質問。MSとMS/MSは何が違うのか、などちょっとした疑問にも丁寧に答えて下さいました。本当に感謝です。

その他、足を止めたブース(印象に残った技術)をご紹介。

杭州愛津生物技術有限公司:試薬リザーバー

精密機器だけでなく、こういった製品も分析技術を支える大事なアイテムだなと実感。

㈲桐山製作所:ガラス実験器具

実物を目にして驚きました。これほどまでに複雑な形のもの、よく作れるなと……。ブースではガラス細工の実演も行われていました。

THK㈱:免震テーブル

数百万円もするものもある分析機器、そりゃ導入をすすめますわ。ブースでは実際にデモが行われていたのですが、地面側がガンガン揺れているのに、機械側の上部は揺れがかなり軽減されていてびっくり。

㈱オカムラ:ラボの空間づくり

動きやすい空間は求められるのはオフィスもラボも一緒。こちらも貢献度の高い「技術」です。

12:00 会場を後にする

【2日目】収穫と反省

~収穫~
・食品関連は無条件に引き込まれることに改めて気がついた(やっぱり好き)
・昨日セミナー中に気になっていた疑問点(用語の意味など)を解決することができた
・有機化学の学習を継続する意味を自分の中で更に明確にできた

~反省~
今回は「教えてもらう」という姿勢が強すぎて、専門家(当業者)とまともに話せるレベルまで自分のレベルを上げて参加できていなかった。次回この種のイベントに参加するときは、何かひとつでよいので当業者とまともに議論できるものを設定して臨むべきだと感じた。そうすることで収穫が更に大きなものになるはず。

興味と知識の関係

当たり前ですが、興味は自分でコントロールできません。しかし、一旦興味を持つと、学習や仕事の過程においては何にも勝る大きな原動力になります。

心の底から「ぶわっ」と何かが出てくるような、目の前の何かに手を伸ばしたくなるような、そんな不思議な感覚。

今回、私はそれを食品分野に関わる内容の基調講演で感じました。

正直、わからない言葉もありました。化学物質名や専門用語など。しかし、聞いていて楽しいと素直に感じました。

自分が好きな分野だからというのはわかっていますが、興味を持つことって「自分の中に少しの知識があるから」という要素が大きいと感じています。

ブースを訪問しているときに、ホモジナイザーのメーカーブースを見つけました。ラボ用のコンパクトなものでしたが、そのメーカーの方から話を聞くのが面白くて、実際に見たホモジナイザーの動きにも感動している自分がいました。

他の機器と明らかに違いました。

なぜでしょうか?

現在、対訳学習で背景知識を積み重ねているのが「ホモジナイザー」だからです。乳化させること(ホモジナイザーの原理含む)、乳化状態を保つこと(乳化剤など)を自分なりにしっかり学習した直後(知識が増えた直後)だったのです。

他の機器と興味の度合いが明らかに違うことに気が付きました。

1カ月前にホモジナイザーを見たとしても、「すごい技術だな」とは思っても前のめりになるような興味はなかったと思います。

興味があるものは、ある程度の知識があるもの。やはりそうなのだと実感しました。

ということは……

逆に考えた場合、ある程度の知識をつければ、それが興味につながるということです。

真正面から見ると難しくて毛嫌いしているものや、視界にすら入っていないもの。そんな存在でも、最初の小さな山を越えて少しの知識を学習すれば、興味に繋がっていく可能性が大いにあるということです。

その興味がどんどん広がり、原動力になり感動を生む。

だから「そもそも興味がある分野ではない」はなしにして、まずは自分で手を動かしてとにかく色々な知識を補強する。

点をたくさん打つ。

そう意識してこれからも学習を進めようと思いました。

初めて参加したJASIS、レポートは以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。