レバレッジ講座管理人さんのブログで「クラウドで仕事を受注すること」について触れられることがあります。実は私も経験者です。
クラウドソーシング含め、講座受講前に経験したジョブ(仕事)について私の実体験をシェアします。今だから言える失敗談もあります。合わせて感じたメリット・デメリットも記載しました。
これから本格的に翻訳の世界に入っていきたいなと考えている方で、似たような状況の方もいると思います。私が全く経験がないときにどのような仕事をして何を感じていたかを知っていただくことで、少しでも参考になればと思い、この記事を書いています。
結論を先に書きます。
実力がない者、一生こき使われて終わり。
以上です。
レバレッジ特許翻訳講座受講前のジョブ経験

私が講座受講前に翻訳でお金をいただいた金額は数万円。下記2パターンの経験があります。
- クラウドソーシング
- メディア企業からの直仕事
クラウドソーシング
クラウドワークスやランサーズに登録しました。
登録した理由:少しでもいいから職歴書にかける「翻訳履歴」をつくるため。そして、「翻訳してお金をいただく」ということをとにかく早く経験したかった。
メリット:
・翻訳のジョブは腐るほどある
・最初の小さな壁を超えるには入りやすい世界
・翻訳分野を限定しないので新しい発見がある
・お金をもらえてモチベーションが上がる
・依頼主が報酬を事前支払い(クラウドソーシング側にストックというかたち)するので、未払いがない
デメリット:
・レートが激安
・クラウドソーシング側の手数量割合が高い
・確定申告のための帳簿付けが超面倒(報酬・手数料・源泉徴収などが混在)
・全て単発仕事のため次につながらない
・スキーム面の成長が見込めない
・毎回サイト(専用システム)を通したやり取りが面倒
夫に帯同していた中国ではビザの関係で就業できず、帰国して初めてお金を稼いだのがクラウドソーシングでした。初めての報酬1500円が入ってきたときは、それはそれは嬉しかった……。3年ぶりに自分でお金を稼ぐことができてジーンときました。
しかし、「このやり方は得策ではない」とすぐに目が覚め、400~1000文字レベルの案件を10件ほど翻訳した後に手を引きました。これはこれでよい経験になりました。
メディア企業からの直仕事
求人サイト内を「中国語・翻訳・在宅」で探すと、中国ではそこそこ有名な企業の日本法人がヒットしました。日本での配信サービスを始めて間もないとのこと。ニュース翻訳でした。
応募した理由:クラウドソーシングでは経験値が上がらないと思い、(仕事をとりにいく先として)一般企業を選択。翻訳レベルに自信がなかったので、まずはチェッカーで潜り込んで翻訳者の訳文を徹底的に勉強したいと考えていた。ちょうどチェッカーの募集だったので、チャンスだと思い応募。(期限2日ほどの簡単なトライアルを受けました)
メリット
・ちゃんとした(?)翻訳の仕事ができる
・他の翻訳者の訳文を見ることができる
・表現方法、表記方法などの知識がつく(自分で調べようとする)
・希望すれば配信記事の末尾に名前が載るので他の翻訳会社にアピールできる
デメリット
・レートが安い
・翻訳会社ではなく、かつ新興企業でもあるため、明確な基準がなく都度判断に迷う
*自分でスケジュールが組めない
*納期が短い(翌日)
(*)について説明します。
こんなパターンがあるのだなとある意味で非常に勉強になったジョブでした。会社が指定した記事(中国で配信されたもの)を日本語に訳す、というお仕事でしたが、特殊だったのが案件をひとつずつ個人で受けるのではなく「チーム制」だったこと。
作業はGoogleドキュメントのようなネットワーク上のツールで実施し、専用SNSのようなもので随時連絡を取り合います。
流れはこうです。
コーディネーターが翻訳案件リストに中国語記事名とリンクをアップ、翻訳者とチェッカーを指定して案件リストに名前を記入。この「名前が記入された」翻訳者に通知が行き、まずは翻訳者が翻訳。翻訳完了したらチェッカーに連絡が行き、チェック作業して1件の案件が完了。
期限はともに「翌日中」、つまり最大で丸2日間。ボリュームは訳文(日本語)ベースで1000~1500文字。
問題は、その翻訳方法。通常の翻訳とは異なり、こんな工程を踏みます。
中国語の原文(元記事)は3000文字から多いときは5000文字。日本での配信は上限を1500文字程度に設定しているため、ポイントを捉えたまま短縮する必要があります。
短縮するって、簡単ではありません。内容を全て読み、どこが肝なのかを理解し、情報の優先順位をつけた上でリライトしないといけません。当然ながら原文には出てこない言葉も大量に使用します。アレンジもします。この時点で「原文と対比」できるものではなくなります。
そして、その「対比できないもの」をチェックするって、かなり高度な技術が必要。どこでどの言葉を短縮したのか、追加したのか、その裏にある考えも理解しなければなりません。翻訳者の判断で順番が前後しているときも。もちろん、翻訳されていない部分も全て読み込みます。
要は、「チェッカーが翻訳者が書いた訳文を見て勉強する」なんていう関係性ではなく、翻訳者とチェッカーが同じレベルでないと成り立たないということです。
そう思っていた矢先に「Kaoさん、翻訳もできますよね?翻訳もやってもらえます?ゆっくりでいいので」という依頼がありました。勢いで「はい」と答えたものの、数千文字に目を通して訳出し、それをリライトするという仕事は想像以上に時間がかかり、納期の「翌日」に間に合わせるために毎回必死でした。
そして、提出時点ですでに次の案件に自分の名前が記入されている→即座に取り掛かる→「翌日」に間に合わせる、の繰り返しでした。
リストに名前が記入される翻訳者・チェッカーは合わせて4人。チームとして、全てをこの4人で回していました。時には翻訳者、時にはチェッカー。ペアを組んで、常に翻訳者かチェッカーのどちらかのポジションでリストに名前が書かれている状態。
これって……「毎日の時間を全て捧げて、チームの一員として営業日を全てブロックされて、でもPCなどのツール・物理的な働く場所は自分の資産を提供するっていう、全て都合のよいようにこき使われる超ブラック会社員」と全く同じじゃん!!!!
しかも、実のところレートはクラウドソーシングよりも安かった……
上手に理由を作り、ご迷惑にならないタイミングを見て割と早めにフェイドアウトしました。
驚いたのは、「それでもやる」という人がいるということ。あの条件、あのレート。フリーランス翻訳者としてのメリットは皆無な働き方。それでもやる人がいるのだなと。
ただ、配信記事末尾に記載されている名前を見ると、人の入れ替わりも激しい模様。そりゃ定着しないわな……。まさに使い捨て翻訳者。
もしかしたら他の人は私よりも高いレート設定になっていたのかもしれません(それでもかなり低いと思います)。ニュース翻訳やライティングのお仕事が好きな人には悪くないかもしれません。ずっと続けていれば勉強にはなったと思います。しかし、この時点ではこれを勉強素材にできるほどの実力が私には備わっていなかった、というのが正直なところです。
一方で、ちゃんとした長文を翻訳したのは初めてだったので、とてもよい勉強になりました。以前、新聞はさーっと読む方だったのですが、この仕事をやってからは「ほうほう、ここの文字は半角なのか」「なるほど、あの企業は日本語ではこう表記するのか」と目に留まる(留める)回数が増えました。これは今後翻訳業をやる上で、とてもよい習慣を頂いたと思っています。
まあ、よいことはこれぐらいでしたが……。
そして、この出来事で心底実感したこと。それがこちら:
実力がない者、一生こき使われて終わり。
この気付きは大きかった……。このままでは私、一生このレベルの仕事しかまわってこないなと感じ、ある意味恐怖でした。この直後です、講座を申し込んだのは。
実力が必要なのは当然として、それを最大限に生かす(生かす場をつかむ)知恵、知識、判断能力も必要なスキルだと気付かされました。
努力の方向について

新しいことを始めるとき、コツコツ努力は必要。これは事実。「努力は裏切らない」――これも正しい。けれども、間違った方向でコツコツ努力をしていたら普通に裏切ると思います。おかしいなと思ったら、舵を切ることも必要。
あのまま必死にジョブを続けていれば月に数万円、十数万円は時間の切り売りで稼げていたかもしれません。けれど、一生そこで頭打ち。
そのことに早めに気付いてよかったです。
その後、レバレッジ特許翻訳講座を申込み。(2018年11月)
講座の学習を始めてからは全てのジョブを一旦クローズしました。クラウドソーシングではサイト上で「今はクローズです」という看板を立てられます。それでも過去にジョブをした先からはたまーに依頼がきましたが、全てお断り。しばらくしてパッタリとなくなりました。要は、私じゃなくてもやる人がたんまりいる仕事ってことです。
私が目指しているのは「私にしかできない最高の翻訳をして、その価値の大きさにお金を払ってくれる」という構図。
あの時期は自分のレベルが低いというのを棚上げにして、様々なものに手をだしていました。手痛い失敗ではありますが、今となっては色々なことに気付かされたよい経験だと思いっています。
以上、これから翻訳業を始めたいと思っている方に何かの参考になれば嬉しいです。
※その後、レバレッジ特許翻訳講座の受講を開始しました。受講9カ月目に受験したトライアルで感じた「進歩したこと」はこちらにまとめています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。私で答えられることがありましたら、いつでも気軽にお問い合わせページから質問してください。