中国語特許明細書 学習方法(その2)

スケッチの威力は絶大

昨日、中国語特許明細書の学習をスーパーの話の売り場の話に例えました。

10/17ブログ 毎週行くスーパーの手羽元の場所

「一度自分の手で売り場をスケッチしてみる」と書きましたが、その中でまたひとつ発見(というか明確になったこと)がありましたので記録に残します。

本日は対訳の訳文ではなく、明細書全体の構成について。

今回わかったこと。結論を先に書きます。

◆翻訳する順番は、
  【発明の詳細な説明・技術分野・背景技術】のセットから。
   次に【課題を解決するための手段】【発明の効果】
が最も効率がよい。

対訳学習はもちろん、実ジョブでも同じことが言えるのだろうなと感じました。

管理人さんも、「頭から(請求項から)訳さない」とビデオで何度もおっしゃっています。背景技術や課題から入った方がストーリーが読みやすいという理由が挙げられます。逆に、請求項は発明の要素が最も凝縮された部分であり、無駄な要素は省かれているので、明細書の中では最も難易度の高い部分だと言えます。

中国語の特許明細書に関しては、上記の理由にプラスしてもう1つ理由があります。

それは、明細書内で「同じ文章がそっくりそのまま段落ごと繰り返されていることが多い」からです。

これは中国語の明細書(中国企業の中国国内出願)を数件読んだ時点で気がついていました。現在、累計で30件ほど読みましたが、やはり共通のことが言えます。実施例の項目で同じチャンクが連続する、というのとはまた異なるスタイルです。

どういうことでしょうか?

わかりやすく可視化しました。

こちらは明細書の構成を図解したものです。(手書きメモが入っていて見にくくてすみません……)

とある特許明細書の構成
【左】中国語 【右】日本語

左が中国語で国内出願されたもの、右側が日本語に翻訳されたものです。

中国の明細書項目にはない項目が日本にはいくつかありますので、全体構成(ページ)に多少のズレはありますが、順番は同じです。

着目すべき点は2点。

1、「1回だけしか登場しない部分」は30~40%
  →ここは完全オリジナル

2、冒頭・後半は「コアとなる部分」からのコピーもしくは抜粋
  →図面の符号(数字)が付く付かないの差のみ

※配分は明細書によって異なります

・明細書の冒頭にあたる要約(課題・解決手段)は、【請求項】【課題を解決するための手段】からの抜粋。

・発明を実施するための形態は、【課題を解決するための手段】【発明の効果】と同じ※図面の符号が追記されているのみ

この図からわかること、それは【課題を解決するための手段】【発明の効果】部分を先にカチッと固めると、その部分を挟んだ「前」と「後」の部分の翻訳がほぼ一瞬で終わる、ということです。

図を見ると明らかです。

では、【課題を解決するための手段】【発明の効果】 から手をつけるのかというとそうではなく、この部分の翻訳を固めやすくするためのステップとして、【発明の詳細な説明】【技術分野】【背景技術】から始めるのがよいといえます。

ここは1回しか登場しないオリジナルですが、ここから手を加えることで、ストーリーが理解しやすくなるからです。発明の内容にふれる一歩手前の階段(踏み台)のような役割りです。

また、上記のことから「【要約】から訳す」というのも非常に効率が悪いことがわかります。

【要約】はシンプルでそれほど難しく見えませんし、冒頭にあるため、「【請求項】は飛ばしても【要約】は先に訳す」ということをしそうになります。

しかし、この明細書の場合は【要約】は【課題を解決するための手段】からの抜粋+【請求項】の抜粋でできています。歯抜けのパズルを先に訳すよりも、全て揃っているパズルを先に訳す方が流れがつかめます。

繰り返しが多いな、同じ文章が出てくるな、というか段落ごと同じだな。複数の中国語明細書を読む中で何度も感じていたことですが、時間をとって分析(パターン解析)まではやっていませんでした。

今回しっかり可視化できたことで、中国スタイルで書かれた明細書をどう料理するのが一番よいか、自分自身に腹落ちさせることができました。これは効率や理解度のアップという面でもメリットがあります。

まとめ

◆中国語特許明細書、翻訳する場合は

①【発明の詳細な説明・技術分野・背景技術】でストーリーを理解しつつ翻訳
②【課題を解決するための手段】【発明の効果】をカチッと固める
③その上で繰り返しを適用し後半一気にスピードアップ
④全部終わったら請求項(請求項も一部同じ部分あり)

逆に②の部分で誤訳すると③まで感染します。コアの②の部分でしっかりとした訳出ができれば、ここで多少時間がかかったとしても、全体の終わりが見えます。

※明細書によっては繰り返しの構成比が低いものもありますので、全てのものがこの配分というわけではありません。

補足(自分に言い聞かせ)

「全体の構成はこうなっていた」「ここがここの繰り返しだった」「図にしてみるとすごくわかりやすかった」など、これは結論ではない。ただの日記。

だから何が言えるのか、だから私は何をすべきなのか、具体的な行動はどう変わるのか、次から(今から)どこをどうするのか。

ここまで明確にして初めて時間を割いて見に行った意味があることを忘れない。往々にして忘れる自分に戒め。